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【ランキング12位達成】 累計53万PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワード国境警備録 ― 偽勇者掃討戦』

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第17話 国境前線要塞 ―終焉の牙、希望の剣

リュドミラ家直属・暗殺部隊【黒牙くろきば】の首領

「黒牙のヴォルゼア」が現れた。

通称:“影喰いのヴォルゼア”


挿絵(By みてみん)


能力と戦闘スタイル

【基礎能力】

能力評価(★5)

殺傷力★★★★★

隠密・潜入★★★★★

魔術耐性★★★★☆

機動力★★★★☆


【固有能力・技一覧】

■1.《影走・カゲバシリ》

自身の影と同化し、どんな場所でも音も気配もなく移動できる。

物理・魔法探知の両方を無効化する。目にも追えない速度で背後を取る。

地形や壁を“影の中”として通り抜ける。

一度消えれば、“どこにでも現れる”可能性がある。


■2.《双月牙・ソウゲツガ》

特殊な二本の曲刀による、回転斬撃技。

両腕を独立して動かし、「前後・上下」から同時に斬る立体的な戦いが可能。

刀身は魔力吸収性があり、魔法を弾く。

切られた対象は、一時的に「五感喪失」の呪いを受ける。


■3.《静寂界・サイレンス・フィールド》

半径20m以内に入った者の魔力と音を遮断する結界を展開する。

この空間では魔法詠唱も会話も不可能。

気配も完全に断たれ、敵味方の区別すら困難になる。


■4.《選別者のオルド・ファング

一撃必殺の「刺突」奥義。

“生きる資格のない者”と判断した相手に対し、自動的に急所を突く。

成功率100%。だが、対象に“未来を賭ける意志”がある場合、失敗する。

これによりヴォルゼアは「生きる価値のない者だけを殺してきた」と語る。



【戦闘開始】

舞台:魔界・国境前線要塞 城壁上部(崩壊しかけの砦の屋根の上)


夜。

戦火で赤く染まる空を背景に、二人の男が向かい合う。

片や、漆黒の仮面をまとい、影の如く立つ暗殺者


黒牙のヴォルゼア

もう片方は、幾多の血と誓いを剣に刻んだ男


アイゼンハワード

風が吹く。瓦礫が崩れる音だけが、静寂の中に響く。


「貴様が……“影喰いのヴォルゼア”か」


「その名に意味はない。私はただ、“選ばれなかった者”を刈り続けるだけ」


仮面の赤い魔石が、ゆっくりと光を灯す。


「問う。貴様は、“この世界に生きる意味がある”と信じるか?」


「あるとも。たとえ千度否定されようと、俺たちは立ち上がる」


「それが、わたしの剣だッ!!」


そして、戦いは始まった!


影、走る《影走・カゲバシリ》

消えた。


次の瞬間、背後に!


アイゼンハワード「ッ――!」

振り返ると、もうそこに刀閃が走る!


ガァンッ!!


ギリギリで防いだが、剣の重みに膝が沈む!


「……遅い。貴様のような“見える者”では、私の速さに追いつけん」

地面の影から“這い出る”ように次の斬撃。


そして次の技。


刃が交錯する ―《双月牙・ソウゲツガ》

ギュルルルルル!!


二本の湾曲剣が、螺旋を描くようにアイゼンハワードを包む!


アイゼンハワード「くッ……!!」


左右、上下、背後あらゆる角度から斬りつけられ、装甲が裂かれる。

斬撃の余波だけで、周囲の石床が抉れた。


ゴゴゴ……バキィン!!


肩から血が飛ぶ。片膝をつくアイゼンハワード。


「貴様の“未来”に価値はあるのか?」


静寂の死域 ―《静寂界・サイレンス・フィールド》

結界が展開される。


音が消えた。

まるで水中に落ちたように、世界から「気配」が奪われる。


魔力も会話も、存在感さえも封じられる空間。


ヴォルゼアの姿すら霞む中、唯一“確かに存在する”のは


殺意


斬ッ――!


アイゼンハワードの背に深く食い込む一閃。

咳き込み、倒れそうになりながらも、彼は立つ。


「…………」


声は出せない。それでも、目が語る。


「俺は、折れない」と。


決断と牙《選別者の牙・オルド・ファング》

そして、ヴォルゼアの奥義が発動する。


仮面の赤い魔石が激しく脈動し、二本の剣が一直線に構えられる。


「この世に、生きる資格がない」


音もなく、刺突が放たれる。


それは絶対の死。

「未来の意志」がなければ、確実に心臓を貫く“選別の牙”。


だが!


ガキィィィィィンッ!!


折れるはずのない斬撃が、弾かれた。


アイゼンハワードの剣が、ヴォルゼアの刃を正面から打ち払う!


「……わたしには、背負う者がいる」


「未来を、託してくれた奴らがいる……!」


「だから、まだ死ねわけにわいかぬ!!」


アイゼンハワードの魔剣が光を帯びる。


銀白にして透明なるその刃―

それは、魔界と人間界、どちらの継ぐ者だけが持つ“秩序の剣”。


斬ッ――!


今度は逆に、ヴォルゼアが防御に回る。


だが


「貴様の剣は、空虚だッ!!」


斬撃は空を裂き、仮面をかすめる。


ベリィィィ……!!


仮面の一部が砕け、ヴォルゼアの片目があらわになる。


その瞳に、確かに“かつての人間の心”が一瞬だけ宿っていた。


「……なぜ、貴様は……折れない……」


「お前も、誰かを護りたかったはずだ……ゼクト!!」


「ッ……!?」


その名を呼ばれた瞬間、ヴォルゼアの動きが止まる。


その隙を逃さず


「これが、俺たちの希望の剣だッ!!」


決着の斬撃が、ヴォルゼアを貫いた。


沈黙


血を吐き、ヴォルゼアが膝をつく。


アイゼンハワードも、剣を杖に立っている。


「……なぜだ……なぜ……この程度の痛みで……心が……震える……」


「お前は、“壊されてなかった”んだよ……ゼクト。最後の最後まで……人間だった」


ヴォルゼアの顔から仮面が落ちる。


そこには、どこにでもいる青年の面影

かつて弟を庇って刃となった、哀しき戦士の顔があった。


最後に、ヴォルゼアは微かに笑う。


「ならば、次は……選ばれる側で……あっても……いいのか……」


その言葉を残し、彼は崩れ落ちる。


長きに渡る影の支配者、黒牙のヴォルゼア。ここに、終焉。



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