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【ランキング12位達成】 累計55万1千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワード国境警備録 ― 偽勇者掃討戦』

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第15話 国境前線要塞 ―砕かれる守り、希望なき死地―

ゴォォォォ……ォオオォン……!!!


地鳴りのような音が、魔界の地を揺らした。

警備塔が軋み、砂塵が舞い上がる。瓦礫が降り注ぎ、空が赤黒く染まる。


要塞の上部、監視楼。そこに、アイゼンハワードが立っていた。

鋭い視線の先には、炎に包まれた国境線。


スティル「……全部、やられとるやん……ッ」

ノルド「あれ、もう“戦線”じゃない。“処刑場”よ……!」


砕けた防壁。吹き飛んだ門扉。

その向こうから――人の波が押し寄せてくる。


それはもはや“軍”ではなかった。

“暴力の洪水”。

三千、五千、否。数万の人間の傭兵団たち。

勇者の名を騙る傭兵団が、魔法火器を抱え、咆哮と共に殺到する。


通信兵「っ……報告ッ!! 第三防衛線、壊滅ッ!! 城門、あと数分で突破されます!!」

伝令兵「本丸、退避勧告が出ました! 全指揮官、撤退準備を――」


アイゼンハワード「待て」


その一言が、全ての喧騒を裂いた。


アイゼンハワードが、ゆっくりと歩き出す。

魔界警備隊の兵士たちが道を開ける。


若き兵士「せ、先輩……もうムリっすよ……俺たちじゃ、止めらんねえッスよ……!」

女兵士「あいつら、“勇者模倣爆弾”まで使ってきてるのよ!? 魔法障壁じゃ防げない……!!」


「俺が行く」


それだけを告げ、彼は魔剣を抜く。


ギン……


銀の音が響いた。

それは、兵士たちの心の中に、何かを灯す音だった。


ノルド「……やる気かよ、ここで、ひとりで」

スティル「……ったく。おっさんがこれやると、カッコええやんけ……!」


そして次の瞬間―


バァン!!!


要塞正門、爆破。


鋼鉄の扉がねじ曲がり、崩れ落ちる。

その破片の中から現れたのは、重装歩兵部隊、斥候隊、火器隊――

そして、“勇者模倣兵”たち。


かつての聖騎士を模した白銀の鎧。

正義の名を騙るその偽者たちが、狂気を宿した瞳で突進してくる。


防衛隊長「持ちこたえろォォッ!!! 退くな、ここが。最後の砦だ!!」


だがその叫びも虚しく、火線が走る。

魔界側の術師たちが焼かれ、槍兵たちが踏みつけにされる。


勇者模倣爆弾が空から降り、城壁が砕ける。

それは、かつて人間たちが“神聖な希望”と呼んだ聖剣の形。

だが今、それは“偽りの正義”で民を焼く地獄の業火となっていた。


魔界将軍「……もうダメだ……魔界は……もう、終わりだ……ッ!」


◇ ◇ ◇


その瞬間。空に、異変。


ズガァァァァン!!!


天に、一閃の雷鳴。

紅蓮の閃光が空を割り、巨大な浮遊城が現れる。


浮遊城の先頭、風を裂いて佇む影。

銀黒のマントをなびかせ、両翼を広げた“魔の王”。


「……応えよう。我が民の絶望に」


大魔王(ダイ・マオウ)


その魔剣「ヴォルフクランツ」を高く掲げると


「この地を汚す者よ。貴様らこそが、真の“悪魔”だ!!」


百万の魔族が、空から一斉に降り注ぐ。

魔獣、黒騎士、古代魔導士、風の霊団、炎の竜騎兵

忘れ去られた魔界の英雄たちの血を継ぐ者たちが、戦場を覆い尽くす。


傭兵団は押し返され、空が火と雷に染まる。


◇ ◇ ◇


さっちゃん「うわぁぁぁ!? な、なんか……ラスボス来たみたいやんけッ!!」

ノルド「いや……違う……あれが、“本物の魔王”なんだよ……」


◇ ◇ ◇


そして


瓦礫の上に立つ、ひとりの男。


アイゼンハワード。


静かに、魔剣を抜く。

その目は、今にも折れそうな兵士たちに向けられていた。


「……これでようやく、未来を賭けた――本当の戦いが始まる」


背をまっすぐに伸ばし、風に外套をなびかせる姿。

その横顔には、恐れも怒りもなかった。


そこにあったのは


“希望”という名の、剣だった。


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