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【ランキング12位達成】 累計55万8千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワード国境警備録 ― 偽勇者掃討戦』

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第10話 国境破壊計画

夜空が赤く染まっていた。


それは夕焼けではない。

遠く、魔界の東部国境にある村デトロイトメタルシティが、燃えていた。


悲鳴。

爆音。

魔力を帯びた砲撃の残響が、大地を割ってこだまする。


《リュドミラ家》直属の傭兵団“ブラッドクラウン”が、和平条約を破って、ついに魔界領へと侵攻を開始したのだ。


しかも、それは「演習」という名目のもとで、既成事実化された“計画的暴挙”だった。


「……やりやがったな、リュドミラ家の連中め」


黒きマントをなびかせながら、アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウスは、崖上から燃える村を見下ろしていた。


手には、修復された魔剣《断罪ノ刃〈ギロティーナ〉》。

その刃先には、かすかな怒りと焦燥が宿っている。


背後から風に乗って飛んできた影が一つ。

黒く煙る空に、毒舌と共に現れたのは、さっちゃんだった。


「アイツら、本気で始めたわよ。このままじゃ、あんたが言ってた“対話”なんて一瞬で吹っ飛ぶわよ、アルおじ」


「……対話とは、一方が剣を抜いた時点で破綻する。わかっておるさ。わしが一番、な」


アイゼンハワードは静かにそう呟いた。


「だが、こちらからは“戦争”を始めぬ。それだけは、守る」


魔界・警備隊指令本部。

一触即発の緊張が走る作戦室では、各部隊が次々と報告を寄せていた。


「住民避難は完了しました! ただし西街区に残っている者が数十名……!」


「敵傭兵団、総勢500名! 魔導装甲兵と火力魔具を展開中! ただの民間部隊じゃありません!」


スティ・ゴルザックが、歯を食いしばりながら机に拳を叩きつけた。


「チッ……あの傭兵ども、完全に戦争モードじゃねぇか!」


彼の目は燃えていた。槍を携えたその背中から、すでに“魔力煙”が滲み始めている。


一方、端末越しに現れたノルド・ミルカは、冷静そのものだった。


「《ブラッドクラウン》の背後には、複数の軍需企業が出資してるわ。

リュドミラ家の資金洗浄にも利用されてる。これはもう、“ビジネス”よ」


「そしてこれは、序章。次は“魔界への全面侵攻”が計画されているわ」


作戦室が静まりかえる。


「……リュドミラ家の狙いは?」


「混乱よ。そして、“開戦”という大義名分。

魔界が一度でも反撃したら、それを口実に大軍を動かすつもり」


その時、魔界中枢より緊急通信が入る。

声は重々しく、そして不穏だった。


「こちら魔界評議会――アイゼンハワード卿、至急確認されたし。

人間界の条約破りを“宣戦布告”とみなし、全面戦争も辞さぬとの方針が採択されかけている」


沈黙が流れた。


さっちゃんの顔色が険しくなる。


「……アルおじ、やばいわよ。魔界が本気で“やり返す”気よ。止めなきゃ、地獄になる」


アイゼンハワードは、ゆっくりと魔剣を鞘に戻す。

その手は震えていた。怒りで、恐れで、哀しみで。


「わしの戦いは……争いを止めるための剣じゃ。だからこそ、今こそ振るわねばならんのだ」


「デトロイトメタルシティを守る。

民を守る。そして、無知な人間どもを殴って目を覚まさせる」


「それが、わしの役目よ」


魔界に侵攻してきた傭兵団との直接戦闘が始まる。

アイゼンハワード、スティ、ノルド、さっちゃんはデトロイトメタルシティへむかって歩みだした。


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