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第7話 人間殺戮マシーン

塔の30階 そこは無機質な鉄のフロアだった。


暗がりの中で耳障りな機械音が響く。


「ギギ……ガガ……」


暗闇の先に、三体の重厚な影が現れる。


挿絵(By みてみん)


名前:デシメタルG

体力:3200

攻撃:850

防御:600

素早さ:600 固有スキル 機械(状態異常スキル無効)


名前:デスメタルH

体力:2800

攻撃:920

防御:600

素早さ:650 固有スキル 機械(状態異常スキル無効)



名前:デスメタルI

体力:3000

攻撃:870

防御:650

素早さ:630 固有スキル 機械(状態異常スキル無効)


「ニンムヲ カイシ シマス」

三体は一斉に赤く目を光らせた。


「こいつら……ただの魔物じゃないな」

勇者アルベルトが剣を構えながら呻く。


リスクは歯を噛みしめる。

「魔王軍の中でも、伝説級の兵器だ……人間殺戮マシーンだぞ、気をつけろ!」


「ちなみに機械なので状態異常は効きかんのじゃ。」

なぜか村長口調になってしまったが、俺は真顔だった。


「ハカイコウセン ヲ ハッシャ」

「ミサイル ハッシャ」

「レーザー光線ヲ ハナチマス」


攻撃のたびにしゃべってくれる親切設計だったが、スピードは尋常じゃない。

でも攻撃をするのを事前に教えてくれるのでありがたい。


「うおおおおおっ!」

勇者アルベルトが炸裂寸前のレーザーを回避しつつ、カウンターで斬りつける!


ギンッ!


「硬いっ……!? 金属装甲が魔法の刃も弾いてやがる!」


「マリア、頼む!」

俺が叫ぶと、シスターマリアが静かに祈り始めた。


シスターマリアがそっと瞼を閉じ、両手を胸の前で重ねる。

空気が震えた。聖なる気配が塔内を満たし始める。


「― 魂の安寧をもたらす光、呪いを鎮める鎮魂の輝き。

汝、迷いし魂よ……

闇より解き放たれ、救いの光に包まれん。


我が祈りと共に降り注げ――


《ルクス・レクイエム》!!」


その詠唱が終わるや否や、天井が光に裂け、空の彼方から巨大な教会がゆっくりと舞い降りる。

黄金と白銀の光を放ちながら、幾つもの教会が塔の中空に浮かび、静かに回転を始める。


ゴォォォォォン……ドォォォォォン……


鐘の音が、重く、深く、世界に響く。

その音に合わせるように、どこからともなく荘厳な讃美歌が流れ始めた。


ゴォォォォォン……ドォォォォォン……


高く透き通ったソプラノ、厳かに重なるバスの低音。

塔全体が、まるで神の式典の中にあるかのような空間に包まれる。


挿絵(By みてみん)


「…Gloria in excelsis Deo…♪」

「…Dona nobis pacem…♪」

「…Requiem aeternam dona eis, Domine…♪」


その神聖な音に、機械兵たちの反応が変わる。


「セイオン…カクニン…」

「ジャミング…フカノウ…」

「ワレ……ココハ……ドコ……?」

「ソウル・エラー ハッセイ……」


火花を散らしながら、デシメタルG、デスメタルH、デスメタルIは次々と膝をつき、頭を抱えるように体を震わせた。

聖なる光の羽が、彼らの金属の身体に静かに降り注ぐ。


「プログラム ヲ……シャット……ダウン……」

「ワタシタチ ハ……シンカイノ……コエヲ……キイタ……」

「カミ……ハ……ホン…トウ…ニ……イタ……」


それきり、機械たちは完全に沈黙した。

塔内には、まだ讃美歌が響いている。

静かに、ゆっくりと、世界を癒すように──。


パーティー全員のレベルが1上がった。


シスターマリアが静かに目を開ける。


「……これは、“魂を癒すための歌”。

生きとし生けるものすべてに、祈りを届ける光です……」


勇者アルベルトは感嘆の息を漏らし、リスクは背筋に電流が走ったような感覚に包まれていた。


「……マリア、君……本当に天使なんじゃないのか……?」


「ふふ、違いますよ。でも、誰かの救いになれたら、それでいいのです」


俺は肩をすくめて笑う。


「まさか機械にまで効くとは思わなかったぜ……あの祈り、マジで最終兵器だな」


「わたし、信じてましたから」

マリアが小さく微笑んだ。


こうして塔の30階、魔王軍の人間殺戮マシーンを撃破した俺たちはさらにその先へと進んでいくのだった。


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