エピローグ そして471歳の次の朝
現代 人間界・とある洋風館の朝。
471歳になったアルは、朝の味噌汁をすすりながら、ふと笑った。
「……今年も何か、面白いことをしよう」
妻の幸子は新聞を読みながら顔も上げずに言う。
「その気になれば、人生は何歳でも変えられるのよ」
すると隣のさっちゃんが布団にくるまりながら呻く。
「また起業するの? もう地獄よ、あの寝ずのブラック経営……わたし社畜ゾンビになる前にゾンビになるって……え、もうなってたわ」
そのとき、旅館の玄関がガラガラッと開く。
「ウッホォォォーーーーイ!!祝いだ祝いやァ!!」
入ってきたのは、あのガブ郎! 金ピカのスーツに身を包み、頭には“祝・アル471歳”の金モールハチマキ。続いてルミラも、花束(※墓地で摘んできたカビ花)を持って、シャララと登場。
「お久しぶりです、アル様。……まったく、無茶ばかりして……でも、それが、私たちの誇りでした」
「うおっ、ルミラしゃん、老けてない!っていうかゾンビだから時間止まってんのか……!」
「ふふふ、ゾンビにアンチエイジングは不要なんですの」
テーブルには次々と並ぶ、お祝いの魔界グルメ。
・黒曜石のカナッペ
・地獄三丁目の鬼メンチ
・471年ものの魂ワイン
ガブ郎は懐かしそうに、アルの背中をバンバン叩く。
「なあ覚えてるか? 最初にさ、ブラック企業討伐に乗り込んだとき、アル様、名刺持ってって上司に渡して『あとはご退場ください』って言ったんだぜ!」
「そうそう!あれで私、惚れたのよ~!って、私だったわ、退場させられたの!」
「私が過労で倒れた時、アル様は言いました……『休むのも、戦略だ』って。あれでゾンビに生まれ変われたんですの……!」
全員で爆笑。
アルはちょっと照れながらも、皆の顔を見渡す。
「……なんだかんだで、我々は、いいチームだったな」
「過去があるから、今があるのよね。ね、さっちゃん?」
「……うっ……また泣かせるの禁止……あたい、涙腺だけ人間だから……!」
旅館の裏庭には、朝日が差し込んでいた。
桜がひとひら舞い、471回目の春を祝福するように――。
「アル様、今年の目標は?」
とルミラが問うと、アルは一言。
「……世界一の、なろう系のゆる起業ライフだ」
「結局起業かーーーいッ!!」
全員でズッコケながら、エピローグの幕がゆるやかに閉じていった。
アルは立ち上がり、微笑んで言った。
「ありがとう、みんな。地獄も天国も、魔界も現代も……やっぱり、人生は楽しくなけりゃ始まらない」
その瞬間
天井がパカッと開いて、ド派手な魔界打ち上げ花火が炸裂!!
\バーーーンッ!!/
「471歳おめでとう!これからも混沌をよろしく!」と書かれた火文字が浮かび上がる。
最後はみんなで円になって手を取り、
♪『魂シェイクで朝ごはん!』を大合唱。
さっちゃんは変な踊りでまた昇天しかけ、
幸子は泣き笑い、
ルミラはこっそりガブ郎にラブレターを手渡し、
アルは471歳の朝を、心から楽しんでいた。
世界は今日も混沌で、そして美しい。
『アル様とさっちゃんの経営塾~1年で100億金貨稼いで魔界アカデミー賞を獲る方法』
ー完ー




