第3話 借金返済と借金倍増
「よーし、アル様!行くわよ!魔界の女帝に金返しに!」
「まるで討ち入りだな、さっちゃん…借金返済がそんなに勇ましくていいのか?」
「いいのよ。借金返済ってのは、ビジネスのヒーローインタビューよ!」
そう言いながら、さっちゃんはふんぞり返って肩で風を切り、《魔界商工信用組合 本店─通称“地獄の貸金庫”の重い扉を開け放った。
中ではメフィスト夫人が、長さ3mの黄金のパイプ煙草をくゆらせながら、魔界産グリーンティー(緑色に光ってる)を優雅にすする真っ最中。
「まぁまぁまぁまぁ……本当に返しに来たの? 冗談でなくて?」
「もちろん!これが500万金貨と、利子100万金貨よっ!」
さっちゃんはどこからともなくデカい皮袋を取り出し、机にドンッと置いた。
「……あらまあ……」
メフィスト夫人のつけまつげが驚きで3秒ほど浮いた。
「冗談抜きで借金を返す客なんて、魔界じゃ希少種なのよ……借りた金は踏み倒すが魔界の基本よ。あなたたち希少 魔界人よ。」
「光栄だな」
アイゼンハワードは苦笑いしつつ、静かに紅茶を一口。
「ふふっ……やるじゃない。あなたたち……今度は1500万金貨、貸してあげるわ♡」
「……いやいやいや!?なんで3倍になってるのよ!?」
さっちゃんの声が裏返った。
「信用ってのはね……返済能力+返済実績×度胸なのよ」
「名言っぽいけど、計算式がえぐい!」
メフィスト夫人は紅茶をすすると、やや遠くを見つめながら語った。
「いい? 商売ってのはね。信用がすべてよ。現金なんてただの道具。信用こそが、本当の通貨なの」
「うわ、出た……名言タイム……!」
「その信用があるなら、銀行も悪魔も、三途の川の渡し舟さえ喜んであなたに貸すわ。でも信用がなくなったら? 砂糖なしのコーヒーよ。飲めたもんじゃない」
「例えが苦すぎる!!」
「ということで、1500万金貨、ちゃちゃっと借りて、次の商売いきましょう?」
と、すでに契約書をすべて用意して笑う夫人。
「……こりゃ借金の地獄のループじゃねぇか」
アイゼンハワードはサインしながらぼやいた。
「でもね、アイゼンハワード。借りる勇気と返す誠意があるなら、商売はどこまでも行けるのよ!」
「誰だ今の……さっちゃんが光ってたぞ……!?」
こうして、アイゼンハワードとさっちゃんは新たな借金、もとい信用を武器に、魔界のビジネス地獄をさらに深く突き進むことになる。




