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【ランキング12位達成】 累計55万6千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第1話 魔界の起業、始めます。

挿絵(By みてみん)

「会社、作ります!」


朝一番。魔界の地獄特有の酸性雨がザァザァ降る中、

さっちゃん(ベビーサタン)は、黒い煙を吹き上げながら絶叫していた。


アル=アイゼンハワードは、その隣で紅茶をすする。


「お前、さっきまで“炊き出し列に並ぶ亡者たちの笑顔が見たい”とか言ってなかったか?」


「だってアル様、金がないと笑顔も作れない世界ですよここは!」

さっちゃんは小さな角をブンブン振りながら叫ぶ。


「それに、私のこの天才的経営のセンス!魔界で腐らせるなんてもったいないです!」


「腐るならせめて静かに腐ってくれ」


「ダメです!動かない魂は、干からびて粉になるだけです!

 というわけで!起業しましょう!!」


かくして爆誕した新ビジネス、その名も

出前RUNラン』!


コンセプトはシンプル!


「魔界スイーツ、玄関までお届け!」


地獄名物・激辛マグママカロンや、霊魂入りプリン、灼熱チョコレートを、

ゾンビやガーゴイルに届けてもらうという、死んでもお腹が減る層向けの画期的サービスである。


「……よりによってスイーツ宅配?」


「魔界には足りてないのよ。カロリーと、愛と、チョコレートが!」


アルはため息をついた。頭を抱えた。思わず耳から火が出そうだった。


だが数時間後、なぜかアルは魔界商工会議所で起業届にサインしていた。


「おかしいな……俺は断ったはずだ……」


「口ではそう言ってたけど、契約書にはしっかり署名してたから安心して♡」


当然ながら、魔界のスイーツ宅配に投資する者などいない。だが、さっちゃんには恐れるものがなかった。


「アル、行くよ。今日は“メフィスト夫人”のところ」


「やめとけ。アイツは金は貸すが、返せないと魂取るぞ?」


「それでも“資本金ゼロ円”よりマシでしょ!」


ドスンドスンと地鳴りを鳴らしながら、彼らは魔界の高級住宅街“ベルゼバブ坂”に到着。薔薇のトゲでできた門をくぐると、そこにいたのは


挿絵(By みてみん)


「おやおや、お若い二人さん。魂の香りがフレッシュねぇ」


メフィスト夫人。七度離婚歴あり、再婚予定ゼロ。趣味は担保回収。


「出前RUN……ふふ、面白い名前ね。でも返済できなかったら?

そうねえ……魂、いただくわ。しかも、分割じゃなくて一括で♥」


「出たあああああ!魂担保!!」


さっちゃんが頭を抱える。アルはなぜかうなずいていた。


「やはり魔界式か……」


こうして彼らは命と魂と引き換えに、起業資金500万金貨をゲット。



■■■



初日から遅配、クレーム、配達先が火山の火口という試練の連続。


アルはついに叫んだ。「もう無理!赤字だぞ!」


そのときさっちゃんは、ふっと笑って言った。


「赤字はスタートラインよ。泣いてる暇があるなら、売れ!」


その目はマジだった。地獄の炎よりも燃えていた。


「ほら、あのドラゴンのお宅。誕生日ケーキ届けに行くわよ!」


「え、でも炎吐くやつだぞ?」


「ケーキも溶けてとろけて、ちょうどいいじゃない」


こうして魔界スイーツ宅配《出前RUN》は、今日もどこかで魂を燃やして走っている。


だが、当然ながら最初は赤字続き。


「アルゥ!また仕入れミスったの!?在庫が腐るぅぅ!」


「魔界で“要冷蔵”が通じるわけないだろう!」


それでもさっちゃんは笑った。


「赤字はスタートライン!泣いてる暇があるなら、売れ!!」


その言葉に、アルの赤い瞳がわずかに揺れる。


「……まったく、君という子は……サイコーにクレイジーだ。」


こうして、“1年で100億金貨を稼ぐ”魔界の奇跡は、

まだ誰も気づかぬまま、小さく、燃え始めていた。



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