第7話 血塗れの再戦
教会の奥に、硝煙と血の匂いが満ちる。
その中央、カナンとアイゼンハワードが対峙していた。
「……悪いね、アルおじ」
風に舞う髪、涙を流しながらも銃剣を構えるカナン。
「……あたしは……死んだ仲間のために、やらなきゃいけないだわ」
その瞬間、空気が震えた。
カナンの足が地を蹴り、彼女の背後から霊力が奔流となって噴き上がる。
宙を舞い、棺剣を展開――棺の蓋が開き、内蔵された墓石弾が煌めいた。
切り裂かれるのは、剣か、想いか、それとも心か。
爆風の中、煙を裂いて二人の影が交錯した。
ギィィン!!
交差する刃が火花を散らす。
重力を無視したように空間を跳躍し、壁を蹴り、地を滑る。
「来いよ、カナンッ!!」
「アンタこそ……本気で来なッ!!」
その瞬間、世界が斬撃の奔流に包まれた。
アイゼンハワードの双刃魔剣ギロティーナが唸り、魂の炎を纏った斬撃がカナンを襲う。
一方、カナンは回転しながら空中で棺剣を開き、霊子弾を撒き散らしながら槍撃のような連続斬りを繰り出す。
「《斬魂・三断葬》!」
「《棺葬・逆墜ノ式》!!」
斬撃、霊弾、爆風、跳躍――
一合、二合、十合……すでに互いの身体には、幾重もの裂傷が刻まれていた。
だが、止まらない。
それぞれが、過去と罪と誓いを背負っているから。
「あたしは──もう、戻れない!!」
カナンが棺剣を逆手に持ち、ギロティーナを叩き折るように振るう。
アイゼンハワードは半歩踏み込み、腹部に一閃を叩き込む。
バシュッ!!
鮮血が飛び散る。
どちらのものか、もはや分からない。
次の瞬間、ふたりは同時に跳んだ。
「《鎮魂斉唱・十連礼打》ッ!!」
「《魂喰い・終ノ型、斬界》!!」
霊弾が咆哮し、空を切り裂く。
双刃が空間を断ち、すべての音が爆音と悲鳴にかき消された。
バキィン!!
爆裂の中心、二人の身体が斜めに切り裂かれ、同時に崩れ落ちた。
どちらも、倒れる。
地面が大きく抉れ、魔力の残滓が紫電となって周囲を吹き飛ばす。
生き残った者たちが恐怖に口をつぐみ、遠くからその場を見つめる中――
ゆっくりと、ひとつの影が立ち上がった。
アイゼンハワードだった。
その体は、血と煤にまみれ、鎧の隙間から煙が立ち上る。
右腕は砕け、ギロティーナの片刃も折れている。
それでも、彼は剣を突き立てて立ち、前を見ていた。
倒れたカナンの元へと、ふらつく足で歩み寄る。
「……よく、やったな」
カナンはかすかに笑った。
その瞳には、怒りではなく、どこか救われたような色が灯っていた。
「……やっと……あたし……戦い終わった、かな」
アイゼンハワードは無言でうなずき、彼女の棺剣を閉じてやる。
魂の叫びと祈りが、静かに空へと溶けていった。




