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完結【51万3千PV突破 】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの過去編 ―魔界の貴族編』

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プロローグ 冥府の境界線

ここは冥府。

死者たちの魂が行き着く終の場所、“ネクロ・ライン”。

その中心、“終律廷しゅうりつてい”の玉座に、王はいた。


「境界が……軋んでいる、だと?」


冥界王ハデスの眼差しが闇の帳を貫いた。

彼の前にひざまずくのは、報告官の魂


「現世との境が曖昧になり、死者たちが引き戻されております。しかも、彼らは“自我”を保ったままです」


「……友引か」


かすれた声で呟くと、王は重く立ち上がった。

古の禁忌が、何者かによって破られつつある。


「誰がやった」


「ヴェールです、《ヴェール》が“冥界コード”の封印を解いた模様」


その名を聞いた瞬間、ハデスの背後の玉座が一瞬だけ軋んだ。

“ヴェール”冥府と異界にまたがる非公認の悪の諜報組織。

死者を再プログラムし、情報兵器として扱う影の機関。


彼らにより世界は静かに、確実に狂い始めていた。


ロンドン・ハイドパークでは早朝、死んだはずの元上院議員が記者会見を開き、自らの死を否定。


モスクワでは軍の機密倉庫が元兵士たちに襲撃され、その映像には明らかに戦死報告済みの顔が映っていた。


東京・六本木のクラブでは、亡くなったアイドルがステージに立ち、観客を昏倒させた後、煙のように消えた。


各国の諜報機関が秘密裏に“死者の再出現”を調査し始めたが、共通していたのは「死者が生者を冥界へと引きずり込む」不可解な現象、通称“友引ともびき現象”。


その事件の背後に浮かび上がったのが、冥界に存在するとされる異界諜報機関ヴェールそして、それら一連の現象は“冥界コード”という未知のシステムの起動によって引き起こされたものだった。


世界の異常事態に対応すべく、MI6・対異能特務課が動く


時を同じくして、現世・ロンドン。


MI6対異能特務課の地下通信室。

赤い警告灯が回り、管制士たちが騒然としていた。


「まただ!東京・上野、死亡確認されたはずのOLが家族の前に現れ“ここはまだ寒いわ”と呟いて消えた!」


「パリでは、死んだはずの画家がルーブルに出現し、展示作品の一枚を“私の作品にはない色だ”と言って盗んだ!」


「バンコクの国際空港では事故死したサッカー選手の霊がファンに取り憑き、“一緒に来て”と叫びながら、20人が昏睡状態に陥った!」


人々はこの奇現象を「友引の災厄」と呼び始めていた。

死者が愛した者、忘れられなかった者を現世へと“引こう”としているのだ。


そこに、黒いスーツに赤いスカーフ、ワインレッドのマントを翻す男が現れる。


「……また世界の危機だな。」


アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウス

魔族貴族でサターンの血を引くMI6最古参のエリートスパイ。

だがその眼差しは、かつての恋人の名を聞くたびにわずかに陰った。


「任務確認。“冥界コード”の無効化と、《ヴェール》の解体。」


彼は立ち上がり、シルバーの懐中時計を開く。

針が、冥府と現世の狭間で、静かに逆回転を始めた。


「では任務内容を確認しようか。

……死者の世界に潜入し、悪の組織と対峙する。ふむ、これはロマンスの香りがするわい。」


その背にマントを翻し、アルおじは微笑む。


新たな作戦名:

『冥界より愛をこめて(From Hades With Love)』

死者の手を握りしめる前に、世界を救え。



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