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【ランキング12位達成】 累計57万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第7話 カルト総本山への突入(カチコミ)

それは、世界の地図にも載らぬ聖域。


静寂の霧に包まれた山岳地帯の奥深く。誰も知らぬはずのその地に、異様な建造物はそびえ立っていた。

《黙示の尖塔アポクリファ・スパイア》。

サイレントカルトの総本山にして、かつて「天と地の接点」と信じられた遺構を基に築かれた、禁忌の信仰の中心である。


挿絵(By みてみん)


巨大な黒曜石の尖塔は、まるで天を貫かんとするかのようにそびえ、空に揺らめく薄紫の霊気を絡ませている。

石造りの外壁には、見たこともない古代語と目のような印が幾重にも刻まれていた。その全てが、訪れる者の心を沈め、恐怖と崇拝の狭間へと引きずり込んでゆく。


塔の周囲には、狂信に染まった信者たちが無言で祈りを捧げる異様な庭園《禁道苑》。仮面を被った監視者たちが巡回し、侵入者に容赦のない粛清を下す。

その先にある《聖灰の門》を越えた者のみが、真なる闇と接触する「内奥」へ辿りつけるという。


そして、そのさらに奥。

大僧正エゼク・ファーリオが座する《霊核のネフシュタン》では、今も血の契約と魂の取引が日々繰り返されていた。


沈黙と狂信、霊と機械、そして人の欲望が渦巻く黙示の尖塔。

この地に、ついに3人の影が侵入する


アイゼンハワード。

風を操るゼロの器、リディア。

そして霊媒師ユナ。


「この塔の天辺で、すべてが終わるのよ」


ユナが言い、アイゼンが魔剣を抜いた。


リディアの瞳に、疾風が宿る。


三つの意志が交わり、黙示の扉がいま、開かれた。



夜の帳が落ちると同時に、サイレントカルトの総本山、その黒曜石のごとき聖堂の尖塔が、不気味な霊圧を空に撒き散らしていた。


アイゼンハワードは、ギロティーナを肩に担ぎ、冷ややかな目で扉を睨む。


「行くぞ。もう、後には退けん」


隣には風をまとったリディア。白銀の髪が夜風と共鳴し、彼女の両掌には風の詠唱が集まり始めていた。


「風は、全ての障壁を裂く。導いてみせるわ」


そして、その背に寄り添うのは、黒衣を纏った霊媒師・ユナ。彼女は手に数珠と死者の仮面を携え、虚空に祈りを捧げた。


「──霊よ。今ここに集いし悪を、正しき流れへ還らせん」


扉が破られると同時に、信者たちの猛攻が始まる。呪符を掲げ、異形の儀式で強化された信者たちが襲いかかる。


「風よ、輪と為れ!」


リディアが掲げた手から、刃のような旋風が発射され、前衛をまとめて吹き飛ばす。回廊の壁に叩きつけられた信者たちは呻き声すら上げられない。


その隙を縫って、ユナが死者の仮面を顔にかざす。


「幽魂よ、顕現せよ――《招霊ノ儀:黄泉還り》!」


足元から淡い光の霊たちが現れ、信者の精神を撹乱する。まるで幻覚を見ているかのように、信者たちは仲間同士で攻撃を始めた。


だが、幹部格の高僧が前に立ちはだかる。全身に結界を纏い、鎖のような呪具を放つ。


「俗世の者よ、ここより先は神罰の領域だ」


その瞬間、アイゼンハワードの目が光を宿す。


「……魔剣ギロティーナ、目覚めろ」


刃に黒い光が集まり、空気が凍るような静寂が訪れる。


「断罪アナテマ――」


冷酷な呪詠が、聖堂に轟く。


「その魂、闇で計られし者に死を。」


黒き斬撃が幹部を切り裂き、鎖も結界も問答無用に粉砕する。


「……終わりだ」


幹部が血のような黒霧に溶けて消え、信者たちの士気が崩れる。


「全員、もう一撃よ!」


リディアが風の輪で再び広範囲を掃討し、ユナが霊たちに命じて精神を縛る。アイゼンが魔剣で止めを刺していく連携。


敵はなす術もなく、崩れていった。


やがて、神殿の最奥、封印の扉が静かに音を立てて開く。


「この先に……大僧正がいる。かんじるわ。」


ユナが小さく呟いた。


リディアは風を纏い直し、アイゼンハワードはギロティーナを握り直す。

ユナが封霊の鈴、霊力を溜めた御札オフダを握りしめた。


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