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【ランキング12位達成】 累計54万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第6話 精神の監獄

地中深く、旧神殿を改造した異端宗教サイレントカルトの総本山。

そこに封じられしは、光でできた牢獄――《精神の監獄》。それは物理的な牢ではなく、意識そのものを拘束し、記憶を絡め取り、魂の輪郭さえも崩壊させる精神兵器だった。


壁も床も天井も存在せず、白一色の空間にただ無限の光が漂う。

その中心に、リディアは静かに座っていた。

瞳は虚ろで、声も感情も発せず、まるで人形のように。


だがその内部、彼女の精神世界では、今まさに激しい波が渦巻いていた。


「……アイゼン……アイ……誰……?」


耳元に響くは、断片化された記憶の残響。

冷たい手が頬に触れ、優しく名前を呼ぶ記憶。

燃え上がる空、瓦礫の街、約束された“最後の任務”。


その中心にいたのは、彼。

アイゼンハワードとユナ・グリムフェルド。


挿絵(By みてみん)

職業:光と影を視る者/霊媒師ミディアム/「封霊の巫女セイリング・メイデン

年齢:見た目は20代後半だが、実年齢は不明(霊的存在との同調によって歳を取らない)


かつて神聖エルディア帝国の祭司一族に生まれ、幼少期に禁じられた霊視能力を発現。その力を恐れた一族によって幽閉されるも、霊的存在“シル=ルフ”と接触し、霊媒師として覚醒。MI6の対異能特務課所属される。


【関係性】

アイゼンハワードとは旧知の仲。過去に一度、命を救われたことがあり、それ以来彼にだけは心を開いている。

リディアに対しては「魂が二重に揺れている」と警告するが、最後にはその覚悟を認め、協力する。


降霊術エン・カリオン:過去の亡霊、あるいは眠れる神格の意志と交信する儀式を行う。

結界術タブー・リング:霊的汚染や精神侵蝕を防ぐ光の結界を展開。

記憶読解ソウル・スキャン:触れた対象の「記憶の残響」を読み取る。


「時間がない。行くぞ、ユナ。」


古びた回廊を駆け抜けながら、アイゼンは小型通信機を口元に寄せた。


「光の干渉領域を突破するにはあと6分が限界。精神汚染が進めば、彼女は二度と戻ってこられない!」


同行するサイバー霊媒師ユナは目を閉じ、詠唱を開始した。

「《識閾解放式・コードΛ》……精神層に侵入します」


霊的干渉装置が唸りを上げ、アイゼンの意識がリディアの心の中へと飛ばされる。


「リディア!」


真っ白な空間に、彼の声が木霊する。


彼女は振り向かない。ただ、涙を流していた。

「……来ないで……わたしはもう、“ゼロの器”になってしまったの……」


「関係ない!」


アイゼンは駆け寄り、彼女の肩を掴む。

「お前は“人間”だ! リディアだ! 俺と戦場を駆けた、あの夜に笑った――俺の仲間だ!」


彼の声が、白い監獄の空にひびを入れる。

空間が歪み、記憶が洪水のようにリディアに襲いかかる。


最後の任務。

魔族との密約。

精神兵器ゼロ。

アイゼンと交わした、「もしもの時は撃て」という誓い。


「私は……あなたに、撃たれるはずだった……なのに、生きてる……なぜ?」


「俺が守ったんだ、お前の心を……だから今度は――戻ってこい、リディア!」


その瞬間、リディアの胸の奥で何かがはじけた。

精神の鎖が解け、白い空間が砕け散る。


目を覚ましたリディアの瞳には、再び光が宿っていた。

アイゼンが手を伸ばす。彼女は、その手を、強く握り返した。


「遅いわよ、相棒」


アイゼンは苦笑し、そして言った。

「遅れてきたヒーローってのは、こういうもんだ」


こうしてリディアは、“ゼロの器”という運命を抱えたまま、ふたたび戦場に舞い戻る。


精神兵器ミメシス・ゼロとの、最終決戦の幕が上がろうとしていた。



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