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【ランキング12位達成】 累計55万PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第2話 地下都市と失われた設計図

パリ地下秘密都市。

その一角、封鎖された旧鉄道管理区画の奥に、鉄錆びた扉があった。


「コードNCC-404……くっだらねぇ隠し方しやがって」


アイゼンは小さく毒づくと、古い金属のパネルに魔力を流し込む。

ジジジ……と緑の閃光が走り、電子ロックが鈍い音と共に外れた。


扉の向こうは、まるで戦時中の研究所のようだった。

分厚い書類、カーボン紙、魔導回路のスケッチ。

棚には“開発番号:MZ-0”と書かれたファイルがずらりと並んでいた。


「……やっぱりな。“ミメシス・ゼロ”……まだ実在してたか」


アイゼンの表情がわずかに曇る。


それはかつて、彼が戦争の最前線で“使われる側”として恐れていた兵器。

記憶を書き換え、精神を複製・転送する禁断の術式兵器。


当時、それを止めるために血と泥の中を這い回った

あの頃の悪夢が、ゆっくりと蘇ってくる。


「誰が、今になって再起動しようとしてやがる……?」


そう呟いたそのとき。


背後で「カチリ」と銃の安全装置が外される音がした。


「動かないで。ここは立ち入り禁止区域よ」


冷たい声。


振り返ると、そこに立っていたのは一人の女だった。


黒と赤のコート、短く整った金髪、冷たい青い瞳。

背中には古いタイプの魔導ライフル。だが構えはプロのものだった。


リディア・フォン=ヴァルシュタイン。


挿絵(By みてみん)



だが、アイゼンはその名を呼ばなかった。


「……その構え、覚えてるぞ。だが……あんた、俺のこと忘れちまったのか?」


リディアの瞳が一瞬だけ揺れる。


「……なぜ、あなたの顔を見て胸が痛むのか分からない」


彼女の表情には迷いがあった。


銃口は確かにアイゼンに向いている。だが、引き金を引く気配はない。

その指は、まるで何かを思い出そうとするように震えていた。


「記憶、いじられたな……《ミメシス・ゼロ》で」


「ミメシス・ゼロ……それ、何?」


彼女の反応に、アイゼンは確信した。

“奴ら”はすでに彼女にまで手を伸ばしていた。


「リディア……お前は“あの日”ここにいた。俺と一緒に密約を交わしたろ」


「……わたしは……私は……!」


銃口が下がる。


その瞬間、天井から激しい振動が伝わった。


爆発音。火花。

地下都市の奥で何かが暴れ始めた。


「くそっ、来やがったか……!」


アイゼンは咄嗟にリディアを庇い、魔力の盾を展開。

頭上の崩落を避けつつ、彼女を抱えて物陰に飛び込む。


彼女は、ぽつりと呟いた。


「……あなた、誰……?」


アイゼンは息を整え、血まみれの額を拭うと、静かに言った。


「誰でもねぇよ。ただの、しぶとい魔族のアルおじさんさ」


崩壊する研究室の奥。


飛び散った資料の中に、一枚の図面が舞い落ちる。


そこに記されていたのは、

“精神転送コア《MZ-0:レヴナント回路》”の設計図だった。


それは、精神と記憶を完全にコピーする装置の“心臓部”。


そしてその設計には、明らかに魔族由来の文字が含まれていた。


つまり、この兵器は、人間だけのものではない。


“魔族の誰か”が関与している。


そしてアイゼンハワードは、それを知っている。

知っていたからこそ、いま、またここに戻ってきたのだ。


物語の核心が、静かに姿を現し始めていた。



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