第15話 ラストエンペラーの玉座
不夜城
その最奥にそびえる黒王の玉座。
玉座の間は天を覆うほど高く、燃えるような黒炎の燭台が無数に揺れていた。かつて栄華を極めた帝国の残響が、石柱の装飾のひとつひとつに刻まれている。
その中心。
重厚な玉座にふんぞり返るのは、ラストエンペラー・愛新覚羅。その傍ら、舞を終えた花のように艶やかに佇むのは、永遠の美女、楊貴妃。
玉座の扉を、足音が響かせながら4人の影が歩み寄る。
アイゼンハワード(血塗られた伯爵)。
ダイマオウ(任侠と破壊の主役)。
アイリス・オオオヤマ(天才科学者 支援型の高性能武器所有)。
トランスジェンダー(回復系マッチョ大天使)。
静寂の中、ラストエンペラーが口を開いた。
「……フッ、久しいな、アイゼンハワード。いや、“英雄殿”とでも呼ぶべきか?」
その声は怒気に満ちていない。だが、内奥には凍てついた恨みが渦巻いていた。
「かつて我を“深淵”へ封じ、帝国の輝きを閉ざしたくせに、今さら人の平和を語るか。お前の剣が奪ったものを、貴様は覚えてもいまい」
アイゼンは眉を寄せた。が、その隣で楊貴妃が艶然と笑う。
「ふふ……あなた、本当に変わらないわね。見なかったくせに。私を。あの夜、あなたが振り返り、私の手を取っていたら……私は、復讐鬼にはならなかった。」
彼女の視線は、まっすぐにアイゼンハワードだけを刺している。
そう、彼女の憎しみは全てアイゼンハワードその人に向けられていた。
「あなたは私を……利用するだけ利用して、捨てたのよ。あなたの使命とやらのために。私の心も、未来も。」
玉座の炎が揺らめく。
アイリス・オオオヤマは沈黙を破る。
「こんなにも呪いに満ちた空間、片付けるには少し手間がかかりそうね。」
「オレはただ、悪党に鉄拳をくれてやるだけだ」
と、ダイマオウは拳を鳴らす。
その傍ら、トランスジェンダーが腕を広げる。
「やれやれ、愛も怨念も、心が壊れそうな夜ねぇ……でも任せな、癒しの筋肉パワー、全開でいくよ♡」
アイゼンハワードが魔剣を低く構えた
「まったく逆恨みってやつじゃのう」
その瞬間
ラストエンペラーが玉座より立ち上がる。
「来るがよい、愚かなる者たちよ。我が帝の威光を、その魂で証明せよ!」
同時に、楊貴妃の体が黒い蝶に変じ、舞うように戦闘態勢へと移行する。
不夜城の黒王の玉座。最後の決戦が、いま始まる。




