第13話 不夜城の門を破れ(中)
不夜城の門前。
魔獣たちとの死闘は、ますます熱を帯びていた。
暗黒の空に咆哮がこだまし、城壁を覆う紅蓮の光が、戦場を妖しく照らす。
「くそっ……あの九尾、心の奥まで引きずり込もうってのか……!」
ダイマオウの額には滝のような汗。
目をぎらつかせ、異様な静けさを保つ九尾が空中にふわりと浮かぶ。
「あなたたち、気づいていないのね……
自分の中の“罪”が、最もあなたを蝕むのよ」
九尾の九つの尾が広がると同時に、《ギガ・ノクターン》の地鳴りのような轟音が鳴り響いた。
さらに空間が黒く歪み、《饕餮トウテツ》の魔力飢餓波が解き放たれる。
「ぐっ……チッ! 俺たちの力が……飲み込まれて……!」
アイゼンハワードの放つ魔弾すら、闇に呑まれて消えていく。
アイリス・オオオヤマが叫んだ。
「このままじゃ、回復も強化も無意味よ! “魔力”そのものが吸い尽くされてる!」
そのとき、ダイマオウが一歩前へ踏み出す。
「なら、まずは“目”を潰すしかねえな。精神操作を仕掛けてくるその尾、断ち切ってやるよ!」
「奴らの連携を断ち切る!」
アイゼンハワードが叫び、魔剣を振り上げる。
「断罪の刻は、いま。」
アイゼンハワードが魔剣を引き抜いた。
紅黒に染まる剣が、禍々しくも荘厳に輝く。
「魔剣よ斬り伏せよ。」
魔剣が地を裂く。風が鳴き、剣閃が《ギガ・ノクターン》の死の旋律を打ち破り、饕餮の巨躯を包んでいた魔力の楯が破られる。
「ギガ・ノクターンの旋律が……乱れた?」
「ぬうっ、我の飢餓波が……断たれただと……!?」
「いまだッ!アイリス!!」
アイゼンが叫ぶ。
「了解ッ!」
アイリス大山。全身超重装甲、両腕には列車砲をも凌ぐ多連装砲。
その一撃は、岩をも貫き、大地をも抉る。
「推して参る!!」
「超重・轟雷砲――《メガトン・クリーガー》ッ!!」
バゴォォォンッッ!!!
咆哮のような砲声。
魔剣が放つ断罪の波動が、虚空を裂いて走る。
直撃を受けたギガ・ノクターンは音の鎧を乱され、《饕餮トウテツ》の魔力波との協調が崩れる。
轟音の交差点で起きた一瞬の“ズレ”が、戦況を動かした。
「いまだ、叩き込め!!」
ダイマオウが地を蹴る。
格闘の雄、任侠と破壊の王。
漆黒の拳に怒気を宿し、風を裂く跳躍とともに九尾へと迫る。
「俺の拳で、貴様の操り糸、断ち切ってやるッ!!」
九尾は口元を妖しく歪めた。
「愚かね……精神の深層を覗いたことがある?」
瞳が輝き、再び精神波を発する――が、もう遅い。
ダイマオウの拳が、幻を砕いて彼女の防御を突き破る。
「破邪覇道拳ッ!!」
九尾の体が一瞬震え、脳裏に刻まれた操りの術式が弾け飛ぶ。
精神操作の支配が、周囲から一気に解かれていく。
「……な、なぜ……わたくしの精神の結界が……!」
ダイマオウがにやりと笑う。
「筋肉が心を守るんだよ。テメェの薄汚い幻術なんざ通じねえ!」
その瞬間、背後から轟音。
アイリス大山の大砲が火を吹いた。
「この流れ、逃さないわよ……っ! 一斉掃射!」
彼女の豪腕が駆動し、超重装甲を揺らして大砲の連続砲撃を叩き込む。
ギガ・ノクターンと《饕餮トウテツ》が防御を試みるも、連携が断たれた今、対応しきれない!
「癒しの天使が・サポートモード、起動♡」
癒しと筋肉の天使が、背後で仲間たちを回復し、強化を重ねる。
「みんな、私のマッスル・ラブを受け取ってくれ♡」
一気に立て直される戦線。
崩れる敵の布陣
だが、九尾はまだ膝をつかない。
その瞳に残るは、なおも深き闇と策略。
「……ふふ。いいわ。ここからが本番よ。九つの尾、開放《黒耀の契約:外法九紋》!」
闇が再びうねり、不夜城全体を巻き込む次のフェーズへと突入していく……。




