第3話 伝説の魔獣の出現
災厄は、突如として訪れた。
それはまるで、天地の理を嘲笑うかのような四つの魔獣咆哮だった。
魔界東方・空域アルティマの上空。
稲妻を纏い、嵐と共に舞い降りたのは、伝説に語られる“魔青竜”。
碧き鱗を閃かせ、翼を広げるたびに空が裂ける。雷鳴と竜巻が混ざり合い、空中都市レグリオスの浮遊装置が次々と破壊されていく。
「離脱! 全員退避せよッ!!」
叫ぶ将校の声も、雷音にかき消された。数千メートルから落下していく居住区。逃げ惑う住民たちの叫び。空が砕け、希望が沈む。
一方、魔界西方・バリオン砂漠では、“魔白虎”が姿を現す。
白銀の体毛は刃のように逆立ち、その双眸は地を穿つ怒りの光。
「グォオオォォォ――!!」
咆哮と共に、大地が割れた。砂嵐に包まれた軍団が、一瞬で消え失せる。
虎の尾が一振りされるたびに、岩山が崩れ、要塞が音もなく沈む。
「まるで地形ごと塗り替えてやがる……これが神話魔獣……っ!」
そして南方・炎熱のカルラ火山。
火口から姿を現したのは、“魔朱雀”。炎の翼は天地を焦がし、舞うたびに空が赤く染まる。
空中に舞い上がった炎羽は無数の火の矢と化し、周囲の集落を次々と焼き尽くしていく。
「魔朱雀の加護だったはずの聖火が……なぜ、我々を襲うのか……!」
祈りを捧げた僧侶の言葉も虚しく、神殿は一瞬で灰となった。
そして北方・湿地帯マリスモラでは、地の底から“魔玄武”が出現する。甲羅には苔むした塔のような構造物が載り、長大な尾で地表を薙ぎ払う。
足元から沼地が崩れ、村落が丸ごと飲まれていく。地割れから吹き出す黒泥は、触れたものすべてを腐敗させる瘴気を帯びていた。
「……止まらん……これはもはや災害ではなく、“意思”を持った破滅だ……!」
そして、全ての出現の背後にいたのは、“魔皇帝”ラストエンペラー。
玉座の間の黒曜石の鏡を前に、彼はほくそ笑む。
「これでよい……かつて封じられた神話の災厄を解き放つことで、秩序は崩壊し、真なる混沌が戻る……」
その背後には、微笑む“妖”の女、楊貴妃こと、サリィの姿。
「お望み通り、魔界の全域は揺らぎ、秩序は崩れましたわ、陛下。あとは……“彼”が動くのを待つだけです」
■■■
その頃、魔王城。
玉座の間に飾られた、黄金の額縁の中の一枚の写真《ダイマオウ就任記念写真》の前で、召喚の魔紋が光を放ち、ひとりの男が現れる。
アイゼンハワード。
「……呼ばれたか。ならば、俺の剣も、仁義に捧げよう」
ダイマオウがゆっくりと立ち上がり、魔王のマントを翻す。
「行くぞ、アイゼンハワード。世界を壊すのも、救うのも、俺たち次第だ」
「仁義と平和の名のもとに、俺が裁く。魔獣に喰われたままで終わるもんかよ。」
“伝説の4魔獣”との戦いが、いま幕を開ける。




