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【ランキング12位達成】 累計57万5千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第9話 決別と別れ

冷却システムが悲鳴を上げていた。


コード・オキナワ旧琉球列島地下に設置された、超大陸間弾道システム“天の裁き”の起爆モジュール。核融合エンジンが起動カウントに入ってから、残された時間はあと5分。


轟音と振動のなか、破壊された地下格納庫の瓦礫に囲まれて、九条イサムはゆっくりと笑っていた。


「ふふ、ハハハハア……いいだろう? この世界の終わりに、俺たちだけが立ち会えるなんてな……この絶望の先に、ようやく“静寂”が訪れるんだ」


「ふざけるな!」

キャサリンが叫んだ。肩を大きく揺らし、血まみれの端末をイサムに突きつける。


「これがコード・オキナワの実行キー……でも、生体音声認証パスコードが必要よ! アンタしか止められないのよ!」


しかし、イサムはその場に胡座をかいたまま、煙草を咥え、目を細めてアイゼンハワードとキャサリンを見た。


「コード・オキナワ。地球人口の74%を削減する、私はリセットボタンを押さない。私はその目撃者となる」


「……どうせ、また別の戦争が始まるだけだ。どれだけ技術を積み上げようが、人類はゴミを生み出し続けるんだ。お前たちギアチルドレンもな」


唇を歪め、イサムは呟く。


「お前らの“感情”なんざ、バグにすぎねえんだよ……兵器のくせに、意志だの、希望だの、虫唾が走る」


その言葉に、ギアチルドレンの一人、プロトタイプG-03《ミア(悲哀型)》が小さく震えた。


「それでも……わたしたちには、意味がある」


「意味だぁ? お前たちは“兵器”なんだ。意味など最初から存在しねえよ」


すると、もう一人、G-02《ノイン(戦闘特化型)》が前に出た。顔は血と油にまみれ、半壊したマスクの奥から赤い眼が覗く。


「意味は……自分で決めるんだ」


キャサリンが震える声で言った。


「……もう時間がない。誰かが、あのロケットで管制中枢に乗り込まないと。手動で“天の裁き”の起動を止めるには……宇宙へ軌道修正しに、行くしかない」


そのときだった。


「オレたちが、行くよ」

G-01《ユウマ(模倣学習型)》が、壊れたアームを引きずりながら言った。


「え……?」

キャサリンが目を見開く。


「僕たち、ずっとアイゼンハワードを見てきた。立ち上がって、また倒れて……それでも人を守ろうとして……その姿に、命の意味を教わった」


「だからこそ……この命で、それを証明したいんだ」


アイゼンハワードが必死に体を起こそうとする。


「待て……行くな……それは命を捨てることだ……!」


「あなたが教えてくれたんだよ、“命は使うためにある”って」

ユウマが静かに笑った。


そのとき、ノインが叫びながら突進した。


「あなたじゃ宇宙船操縦できないでしょ、これ以上は止められない……!!」


バキン!


アイゼンハワードの脚が砕けた。

アイゼンハワードの足が、ノインの一撃でへし折れたのだ。


「ぅああああッ……!」


地に伏すアイゼンハワードに、3人のギアチルドレンが背を向けて走り出す。


「止めないで、……これは、わたしたちの選択なの」


カウントは残り2分30秒。


イサムは嗤った。


「くだらねえ、茶番だな……兵器のくせに感情ごっこか……結局、お前たちは俺の作ったプログラムで動いてんだよ!」


「違う……あなたに創られた命じゃない」


振り向かず、ミアが言った。


「私たちの3人の心は、つながっている。」


ロケットの発射口に飛び込む3人のギアチルドレン。


その背に、ボロボロのアイゼンハワードが涙を流しながら叫んだ。


「やめろォォォ――ッ!!」


だが、彼らの決意は変わらない。


ロケットの扉が閉まる。


そして


ゴオォォォォォン!!!


轟音とともにエンジンが点火して、宇宙へと飛び立つ。

命を託し、未来へ向かって。


ギアチルドレン搭乗のロケットが、天を突き抜けていく。


まるで希望の火のように。


夜空に光が咲いた。


そして、地球での爆発は……起こらなかった。


地球は、救われた。


しかし、彼らの姿はもう、戻ってはこなかった。


静寂の中、アイゼンハワードのかすれた声だけが響く。


「……ありがとう……ギアチルドレン……」


その声は風に消え入りそうに弱く、けれど確かに震えていた。


「……お前たちは、未来を……この手には届かない場所まで……運んでくれた……」


目に浮かぶのは、笑い合う3人の姿。


「私が守るべきだったものを……お前たちが、守ってくれたんだな……」


一筋の涙が、頬を伝う。


「すまなかった……そして……ありがとう。お前たちは……最高の子供たちだった」


彼は静かに膝をつき、空を見上げた。


「また、どこかで会おう。今度は……ちゃんと、笑って」




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