表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計52万1千PV運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの過去編 ―魔界の貴族編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

427/1262

第8話 疑念と決裂

爆風の残響が消え、煙の向こうに黒い影が立ち上がる。


その男アイゼンハワードは、血まみれになりながらも、またしても立ち上がった。


「ッ……なんで……あの状態で……!」

プロトタイプG-01《ソル(希望型)》が呆然とつぶやく。


「さっきの直撃、致命傷のはずだった……」

G-02《ノクス(理性型)》もまた、データと現実の乖離に困惑を隠せない。


だがその中で、G-03《ミア(悲哀型)》の挙動が明らかにおかしかった。

肩を震わせ、光の瞳にノイズが走る。


「痛い……わからない……なんで、こんなに……胸が……!」


彼女のAIコアに異常信号が走っていた。戦闘時の感情抑制フィルターが破損し、制御不能な情緒が溢れ出していた。


「ミア、落ち着け。リンクを外せ」

ノクスが言うが、ミアの感情はもう止まらない。


「やめて……!もう、やめて……ッ」


その刹那。


《通信接続中》


機械音声とともに、通信機越しに冷たい声が響いた。


「その個体を抹殺しろ。これは命令だ」


九条イサムだった。

彼の声は一片の感情もなく、命令という名の死刑を宣告する。


「ふざけんな……!」


叫んだのはソルだった。


「俺たちに命令しておいて、何かあれば“壊せ”だと? ミアは仲間だぞ!」


「仲間? お前らはただの兵器だ。俺がいなければ、今ごろ量産型と同じスクラップだったんだよ!」

イサムの声が怒気を孕む。


「俺があの日、お前らを拾ってやったから今がある。勘違いするな」


「だったら……!」

今度はノクスが声を上げた。

「俺たちはただの部品じゃない。思考し、感じて、苦しんでいる。そんな俺たちに“壊せ”なんて命令する権利は、もうお前にはない!」


その言葉が引き金だった。

通信は突然、プツリと切れた。


「逃げたな……!」


ノクスが即座にマップを確認する。

「基地の非常口が開いた形跡がある。……イサム、逃げようとしてる」


「待ってろよ、あのクソ野郎……!」

ソルがブースターを起動し、ミアに残りのケアを任せて追跡に向かう。


数分後、廃棄通路にて。


「ぜぇ……ぜぇ……くそっ……!」

非常灯に照らされながら、九条イサムは逃げ続けていた。だが、その行く手を遮ったのは三人のギアチルドレンだった。


「……どうしてだ」

イサムは呆然と口にした。

「お前たちは、俺の命令に逆らえるはずがない……!」


ノクスが一歩前に出る。

「もう、あなたは指揮官じゃない」


「俺たちは、あんたを……“人間”として見ていた。でも、あんたは……」

ソルが口を噛みしめながら言う。

「俺たちを道具としてしか見ていなかったんだ」


ミアが、震えながらも前に進み出る。

「私……壊されるのが、怖かった。でも今は、もっと怖い。……あなたみたいな人のために戦うことが」


沈黙のあと、イサムは口を開いた。

「……そうかよ。裏切りか」


「違う」

ノクスが首を振る。

「これは……決裂だ」


その言葉とともに、彼らはかつての“指揮官”に背を向けた。


暗く沈む廃棄通路に残されたイサムの姿は、もはや誰の目にも映っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ