第十七話 新たなる旅路へと
海上に立ち込めていた濃霧が、まるで何かに怯えるようにすぅっと引いていった。
静寂。空気が一変する。
不死王リッチ・ロードは、俺たちの手によって討ち果たされた!
「やった……終わったのか……?」
勇者アルベルトが、剣を鞘に納めながら息を吐く。
「すごいですね……リスクさん!」
シスターマリアが、目に涙を浮かべながら俺の腕を握る。
そのときだった。
俺リスク、勇者アルベルト、そしてシスターマリアの体にじんわりとした温もりが広がる。
レベルが2も上がる。
勇者アルベルトの体にじんわりとした温もりが広がる。
《勇者アルベルトのレベルが上がった!》
《体力が25上がった!》
《力が22上がった!》
《防御が15上がった!》
《素早さが22上がった!》
《賢さが15上がった!》
《魔力が10上がった!》
《運が8上がった!》
《新しい魔法「ブリザード」を覚えた!》
「おっおそらく名前から氷系の魔法だな。冷やすぜ!」
勇者アルベルトが、突然、熱が出たときに、いつでも氷まくらを作れるようになった。
シスターマリアの体にじんわりとした温もりが広がる。
《シスターマリアのレベルが上がった!》
《体力が15上がった!》
《魔力が14上がった!》
《素早さが8上がった!》
《賢さが22上がった!》
俺の体にじんわりとした温もりが広がる。
《リスクのレベルが上がった!》
《運が30上がった!》
《賢さが25上がった!》
《新しいスキル「市場分析能力」を覚えた!》
シスターマリアが俺に聖なる魔法をかける。
「聖なる光がリスクを記すステータス!」
空中に、俺の現在のステータスが浮かび上がった。
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名前:リスク(村人)
呪い:1歩歩くと体力が-5
レベル:25
体力:23
攻撃:0
防御:+900(アイギス・アブソリュート効果中)
素早さ:0
魔力:0
賢さ:235
運:255
※この世界で、最も弱いスライムに負けた男。
称号:必殺の仕事人 リスク
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呪い解除しますね。とシスターマリアが続けて俺に聖なる魔法をかける。
「聖なる光が呪物の束縛を解き放つ――《ホーリー・リリース》!!」
清らかな光がリスクの身体を包み込み、盾が自動的に外れ、闇の呪縛が煙のように霧散した。
「ゾンビの俺が生き返った……オレの顔に、ちゃんと血の気が戻ってる……ッ!」
再度、変更されたステータスが浮かび上がる。
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名前:リスク(村人)
レベル:25
体力:23
攻撃:0
防御:0
素早さ:0
魔力:0
賢さ:235
運:255
※この世界で、最も弱いスライムに負けた男。
称号:必殺の仕事人 リスク
―――――――――
はい、防御力0の村人のリスクにステータスが戻りました。
「詳細っと、リスクさん新しいスキル”市場分析能力”は価格や需要の変動を見極め、最適なタイミングで物資を仕入れるスキルらしいです。」
と説明してくれた。ありがとうシスターマリア、でも戦闘で全く役に立ちませ――ん。
呪いの盾でをある破滅の盾を俺は道具入れにしまった。
バルドル号に戻り、幽霊船の船長室で見つけた航海日誌。
グレイス・オマリーの恨みつらみが、そこにぎっしりと書かれていた。
「まったく、アーケロンの野郎……顔はいいけど性格クソだったから、即離婚してやったわよ」
女海賊グレイス・オマリーが毒づくように言い放つ。
「母ちゃん、ここ見てくれよ!」
エリックが指さしたのは、航海日誌の一節
そこには、「星の羅針盤」が眠る塔の座標が記されていた。
「……お宝の匂いがするねぇ」
グレイスが悪戯っぽく笑う。
「旅は……まだまだ続くってことか」
俺は拳を軽く握り、再び前を向いた。
「さぁ、行こう。星の塔へ!」
潮風吹き帆が上がった海賊船が動き出し俺たちを新たなる冒険へと後押しする。
バルドル号が新たなる旅路へと向けて、ゆっくりと舵を切った。
【第二部・完】