第13話 光と闇の最終決戦 (下)
アザリエルが叫ぶと、虚空に闇がうねり、無数の黒い槍が生み出される。
それが一斉にレイラを貫こうと襲いかかる―!
「聖なる光よ、盾となれ《セラフの加護》!」
レイラが祈ると、まばゆい光が展開し、空間に聖域が生まれる。
黒槍が光のバリアに当たると同時に爆ぜ、周囲を閃光と衝撃が満たした。
「ふん、光の防御か……だが、貫けぬものなどない!」
アザリエルが手をかざすと、闇が実体化し、巨大な双剣となって顕現する。
名を《堕天の刃・カラドリウス》天界を裏切りし者にのみ扱える禁忌の刃。
「……ならば、私も応えよう」
レイラが両手を組み、天に祈る。
空から降り注ぐ光が彼女の体に集い、黄金の剣へと変わる。
その名は《聖剣ルミナ・エル》
天使アリエルの象徴、神の御前にあった唯一の剣。
二人は空を駆け、交差する。
聖と闇の剣がぶつかるたび、空間が裂け、稲妻のような光が迸った。
「アリエル……お前は変わらぬな。誰かを守るために戦うという……偽善の天使め!」
「私は変わらない。……でも、あなたが堕ちた理由も、今はわかる。痛みも、哀しみも」
刹那、レイラの剣から淡い涙の光が放たれる。
その一撃はアザリエルの闇を包み込むように斬り裂き、
彼の双剣を片方、砕いた。
「なっ……!?」
「あなたを倒すためじゃない。救うために、この剣を振るうの……」
アザリエルが膝をつく。闇の力が揺らぎ始める。
だがその瞳は、まだ抗っていた。
「お前は……いつもそうやって……私に、手を差し伸べるんだな」
「だって、あなたは……私の兄だったから」
アザリエルの目が大きく見開かれる。
「覚えて……いたのか……?」
「忘れたことなんて、一度もない」
沈黙の中、アザリエルの闇の翼が霧散し、ただの男としてそこに跪いた。
だがその背後、ノアの声が響く。
「甘いな……! アザリエル、裏切り者には制裁を!」
突然、アザリエルの胸を、黒い雷撃が貫いたノアの制御装置が起動したのだ。
「……ノア……貴様……!」
「レイラ、アイゼンハワード、お前たちの感傷はここで終わる。アザリエルは捨て駒。だが私は違う。私は神になる!」
アザリエルは微笑んだ。血を流しながら、最後の力でレイラを見つめる。
「……レイラ……あとは、任せた……。ありがとう……妹よ……」
その言葉と共に、アザリエルの体は塵となって崩れ落ちた。
レイラはその灰を静かに受け止めた。
聖剣を握り直し、目を閉じて小さく祈る。
「兄さん……あなたの願いは、私が引き継ぐ」
次の瞬間、空間が崩れ、時の門が出現した。
Dr ノア が笑う。
「さあ、最後の幕を開けよう。未来を変えるのは、天才である私だ!」
そして、闘いは終決戦へ




