第9話 扉の選択と覚醒の刻(とき)
亜空間の流れに導かれるまま、アイゼンハワードとレイラは《アビスゲート》の奥、神々が去りし後に残したという“光と闇の神殿”へとたどり着いた。
堂々たる神殿の中心、二つの扉が彼らを待ち受けていた。
片や、純白の光を湛えた大理石の扉。
もう一方は、深淵の闇に包まれた黒曜石の扉。
扉の上に、まるで古代神語のような詩が刻まれている。
「光と闇が交差するところに“ダークアース”は門の鍵。
門は二つ、過去と未来の交差点。
封じられし闇神核は、再び世界に試練を与える。」
レイラがそっと呟いた。
「……私たち、選ばなければいけないんだね。どちらの運命を過去か、未来か。」
アイゼンハワードは黙って黒い扉に手を伸ばす。
「俺は未来を視る。“破滅”が待つとしても、それが世界の真実だ。あの時の戦いの続きが、まだ終わってない気がするんだ。」
レイラは光の扉を見つめ、手を当てる。
「私は……過去を知りたい。なぜ私が“選ばれし者”なのか、なぜあの日、母は私に涙で別れを告げたのか……。真実が、ここにある気がするの。」
扉が同時に、鈍い音を立てて開いた。
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レイラ:光の扉の試練【ライトアース編】
まばゆい光に包まれた神殿内部は、静謐で神々しい雰囲気に包まれていた。
そこに現れたのは、一人の女性の幻影
レイラの母、エリシア。
エリシア「レイラ。あなたには真実を知る資格があるわ」
レイラ「お母さん……?どうして……」
エリシア「光とはただ正しさではない。傷を癒し、他者を赦すこと。そして、自らをも赦すこと」
そして、二つの試練が告げられる。
【試練①:赦しの迷宮】
レイラはかつて自分が救えなかった人々の幻影と向き合う。幼き日の友人、失われた村人たち。
一人一人の幻影が涙を流し、レイラに問いかける。
「なぜ助けてくれなかったの?」
「あなたは勇者じゃなかったの?」
レイラはすべてを正面から受け止め、そして言った。
「ごめんなさい。でも、私はあなたたちの記憶と共に歩き続ける。もう逃げない!」
幻影が光に包まれ、消える。
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【試練②:光の裁定】
天空に浮かぶ裁判台に立たされるレイラ。裁定者は天界の七神のひとり、“聖炎神ヴァルオス”。
ヴァルオス「人間は愚かだ。お前もまた罪に穢れた存在。光の力に相応しいか、示せ」
レイラは剣を抜く。真っ直ぐに神へと挑む。
魂を賭けた一太刀が、神の炎を貫いた瞬間――ヴァルオスは笑う。
「……人間、面白い。ならば託そう。“光の地核”を、お前に」
レイラの手の中に、神殿の光が凝縮した白き結晶が現れる。
レイラは涙を流しながら見つめる。そして、胸の奥から光が溢れ始める。
「私の中に……母の意志が……!」
白い羽根が、レイラの背中からふわりと顕現する。
その瞬間、レイラは《神核の半身》として覚醒した。
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アイゼンハワード:闇の扉の試練【ダークアース編】
闇の神殿は終末のように沈み込んだ空間。天も地もない混沌の中、彼は歩き続ける。
そこに現れたのは、もう一人の自分――“闇のアイゼンハワード”。
「お前は偽善者だ。すべてを救えると思っている。だが世界はそんなに甘くない」
【試練①:自己否定の影】
過去に殺した敵、裏切った仲間、信じていた者に裏切られた記憶が具現化する。
「お前は勇者じゃない。破壊者だ」
しかし、アイゼンハワードは呟いた。
「それでも――俺は前に進む」
影は裂け、光の欠片が現れる。
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【試練②:神なき審判】
闇の神“デセクト”が姿を現す。
「我こそが真の世界秩序。お前は闇を否定しようとする者。では受けてみよ、終末の審判を」
闇の大剣を受け止め、アイゼンハワードは吼える。
「闇は拒絶するものじゃない。認め、制御し、背負うものだ!」
剣が折れ、神が崩れ去る。
手にしたのは黒き結晶。
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二つの扉を超えて再会
神殿の中心へ、光と闇が収束する。
レイラは白い翼と共に。アイゼンハワードは右腕に禍々しき黒の紋章を灯して。
“ライトアース“と“ダークアー“が融合した。
それは光と闇の両方を内包する、完全なる中庸の神核だった。
レイラが手を添えると、それは優しく震え、二人の前に文字が浮かび上がる。
「汝ら、選びし者よ。いま、世界に新たな秩序を示せ。」
二人は互いに目を見交わした。
「この世界は……私たちが変える。」
「たとえ、神をも敵に回してもな。」
そして、闇神核、光神核
は二人の手に収まった。




