第7話 そして開かれる亜空間《アビスゲート》
高慢で冷酷。堕天使アザリエルが現れた。
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名前:アザリエル(黒魔術師)
レベル:70
体力:9000
攻撃:820
防御:999
素早さ:999
魔力:2800
賢さ:800
運:1
この世界でかつて天界に属していたが、人間を軽視するあまり堕ちた存在。巨大な翼と闇の魔力を持つ。
別名: 堕天使アザリエル
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廃駅跡の空間は、まるで時間が止まったかのような静寂に包まれていた。
その中心に立つのは、復活を遂げた堕天使─ザリエル。
巨大な黒き翼がゆっくりと広がり、羽ばたくたびに空気が揺れ、光が歪む。
「お前たちは知らぬ。人間がどれほど醜く、愚かで、傲慢かを…」
レイラとアイゼンハワードは、冷たい汗を額に滲ませながらその姿を見据える。
「だが、罰を受ける時が来た。この翼は神の恩寵に非ず……滅びの証だ」
アザリエルが天を指差す。
「《堕天裂光》」
ゴウッ!!
その瞬間、黒い翼が地鳴りのように羽ばたき、背後に光の剣が顕現。
斬撃の軌道は、重力を無視して空間そのものを断ち切る。
「来るぞッ、伏せろレイラ!」
アイゼンハワードが叫んだ瞬間、床が一瞬にして真っ二つに裂ける。
剣の風圧だけで、レイラの肩が切り裂かれ、鮮血が飛び散った。
「くっ……!! あの一撃、直撃していたら……」
レイラが歯を食いしばる。
だがアザリエルは歩みを止めない。
その手のひらに爪を立て、自らの血を滲ませた。
「我が血を捧げ、貴様の魂を蝕む」
「《血涙の契約》!」
漆黒の魔法陣が空中に浮かび、そこから糸のような呪詛がレイラを襲う。
彼女の身体が一瞬で硬直し、目の奥に赤黒い光が差し込んだ。
「く……ああああッ! 」
「やめろッ!」
アイゼンハワードが魔槍を振り下ろすが、アザリエルは指一本で防ぐ。
闇の魔力が一気に逆流し、アイゼンハワードは吹き飛ばされる。
「正義とは誰が決めた?神か? 貴様らか? 笑わせる…」
アザリエルは足元に円を描くように指を滑らせた。
そこから浮かび上がる黒き魔方陣。
「問われるべきは、己自身」
「《黒き審神者》、出でよ!」
地面から這い出したのは、影のようにうごめく黒き使徒。
それはアイゼンハワードの影に溶け込むと、彼の動きを鈍らせていった。
「……くっ……動きが……遅い……!」
「うぅ……視界が、ぼやける……」
レイラも膝をつき、呼吸が浅くなる。
そしてアザリエルの瞳がゆっくりと古代の壁画へと向けられた。
「ここか……ここに繋がっていたのだな。“古代の門”よ」
彼が両手を天へと掲げた瞬間
廃駅の天井が震え始めた。そこに刻まれていた古代の紋様が、光を放つ。
「《アビスゲート》……開け、深淵の門よ」
アザリエルの声が重なり、詠唱が闇を裂く。
「闇より生まれし深淵の門よ。時空を裂き、すべてを呑み込め──《アビスゲート》!!」
ビキビキビキッ!!!
空間が裂け、漆黒の裂け目が空中に現れる。
そこから、異次元の風と重力が吹き出し、レイラの身体がふわりと浮き上がる。
ゴオォォオオン!!ゴオォォオオン!!
「……いや……いやっ、引っ張られる!!」
「レイラッ!!!」
アイゼンハワードが駆け寄り、寸前のところで彼女の手を掴んだ。
だが引力は凄まじく、二人とも今にも呑み込まれそうになる。
「このままでは……まずいッ!!」
その隙を突いて、背後ではDr.ノアが逃げ出していた。
彼の鎖に繋がれていたジェームズ博士も引きずられるようにして連れ去られていく。
「……フフ……計画は、まだ始まったばかりですよ、アイゼンハワード君……」
そして、アザリエルの背後に広がる深淵の門が、ゆっくりと開き始めようとしていた。




