第4話 洞窟探索
次の日、最初の町を出発した俺とシスターマリアは、勇者アルベルトと共にネズミ盗賊団のアジトの洞窟へと向かった。目的は物資補給。アルベルトが前線でモンスターを倒して進む間、俺たち補給部隊は宝箱や鉱物を回収し、必要な道具を補充する役目を担っている。
「さあ、行くぞ!」
勇者アルベルトが剣を掲げ、堂々と洞窟へ踏み込む。
「物資補給係を頑張りましょうね、リスクさん」
シスターマリアが微笑む。俺は小さくうなずいた。
洞窟内は薄暗く、湿った空気がまとわりつくようだ。勇者アルベルトは、次々と現れるモンスターを軽々と斬り伏せていく。スライム、ゴブリン、コウモリどれも彼の敵ではない。
「ははっ、今日は調子がいいぞ!」
先を行くアルベルトは軽快に剣を振るい、どんどん奥へと進んでいく。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! そんなに速く行かないで!」
俺が叫んだ時にはもう遅かった。気づけば俺とシスターマリアは完全に勇者アルベルトとはぐれてしまっていた。
「……リスクさん、どうしましょう?」
「どうしましょうって……とにかく追いかけるしかないだろ」
その時、突如として影が洞窟の奥から飛び出してきた。
「チュチュチュッウウウ!」
「げっ、ネズミ盗賊団……!」
目の前に現れたのは、毛並みの汚れた中ネズミの男。短剣を手にした盗賊団の一員だ。
名前 中ネズミ男
体力 : 15
攻撃 : 8
防御 : 6
素早さ: 8
この世界でネズミと人間が合わさったモンスター短剣と、するどい爪で冒険者を襲う。
「リスクさん、私の後ろに隠れてください!」
シスターマリアの言葉に俺の小さな男のプライドが砕かれる。
「はいはい、一般市民は戦闘の邪魔ですもんね」
俺が皮肉交じりに言うと、ネズミ盗賊団の中ネズミ男が短刀と鋭い爪を振りかざして襲いかかってきた。
「聖なる光を我にライブラ!」
シスターマリアの聖なる魔法が発動し、閃光が杖から放たれ眩しい光が洞窟内を包む。
チュウウウウUuu!!!
その瞬間、中ネズミ男は光に焼かれるように消滅した。
「す、すげえ……」
思わず呟いた。俺の体にじんわりとした温もりが広がる。
《リスクのレベルが上がった!》
《運が1上がった!》
《賢さが2上がった!》
《新しいスキル「ほめちぎりテクニック」を覚えた!》
「……なにこれ」
俺の目の前に浮かび上がる文字に、俺は唖然とする。新しいスキルは「ほめちぎりテクニック」……。
またしても戦闘には何の役にも立たないスキルだ。
だが、せっかくだ。試してみよう。
「シスターマリア、すごい! すごいよ! こんなに簡単にモンスターを倒しちゃうなんて、天才魔導士だよ!」
「……えっ?」
シスターマリアは一瞬驚いた表情を見せたが、やがて頬を赤らめた。
「なんか……褒められると嬉しいですね、リスクさん」
(あー、なんか癒された……)
俺がしみじみと呟いた瞬間、背後から陽気な声が響いた。
「おーい! 遅いぞ二人とも!」
「うおっ!?」
振り返ると、勇者アルベルトが片手を上げて立っていた。
「ごめんごめん、なんか調子よく進みすぎちゃったよ」
「ほんとにお前はマイペースな奴だよ……」
俺は大きくため息をついた。
こうして、俺たちは再び合流し、洞窟探索を続けるのだった……。