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【ランキング12位達成】 累計57万5千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第9話 魔王の裁きの勅令

王座の間は闇に包まれていた。

空間そのものが呻き、天井から吊るされた“哭く心臓コル・ラメント”が、ズゥゥン……ズゥゥン……と重苦しい鼓動を響かせている。


玉座に君臨するは、魔王ガルヴァ・ネクロデス。

全身を漆黒の甲冑で覆い、顔すら見えぬその存在は、ただ“圧”そのものであった。


その目前にひざまずくのは、粛清執行者ザガード・メル=ファング。

長い銀髪が床に散り、彼の表情には興奮と怒気、そして忠誠が入り混じっている。


挿絵(By みてみん)


「陛下。報告いたします。」


ザガードの声が響くと、空気がわずかに震えた。


「アル=アイゼンハワード中佐が、ギアチルドレン第4号“Lilith Byte”を伴い、命令なく魔界を離脱。人間界旧領に潜伏中と見られます。」


沈黙。


ザガードは眉一つ動かさず、続ける。


「彼は“ギアチルドレン4号”に対し、明確な感情的愛着を抱いております。かつて我らが破壊と死を刻むために生み出した戦闘兵器に、です。」


「ふむ。」


魔王の甲冑の隙間から、骨のような手が現れる。

その手が宙を握ると、空中に巨大な魔紋が現れた。


「粛清対象:アル=アイゼンハワード。執行形式:“魂の処刑”。」


紫黒の魔紋がゆらめき、数千のルーンが一斉に魔界中枢へと広がっていく。


「その魂、記録からも削除せよ。“存在”そのものをこの世界より抹消せよ。」


ザガードの口元がゆがんだ。


「仰せのままに。奴の魂、私がこの手で断ち切ってみせましょう。二度と裏切りの火種を残さぬように。」


魔王はザガードの方へ、わずかに首を傾ける。


「ただし」


その声は、すべてを凍らせるような冷気を帯びていた。


「……今回は貴様に“情”が入りすぎていないか? ザガード。」


ザガードの背中に一瞬、冷たい汗が走った。


「……恐れながら、忠誠の証にございます。」


「ならば、見せてみよ。裏切り者を裁く、正義の刃を。」


「はっ……!」


ザガードは立ち上がり、背に仕込んだ漆黒の剣“レクイエム・ファング”を抜き放つ。


「正義と粛清をその胸に、ザガードよ。我が魔王軍の爪たるにふさわしくあれ。」


「御意。」


その瞳には、確かに宿っていた。

かつてアルと共に戦った“仲間”としての微かな哀しみ、

それを遥かに凌駕する、“魔王の刃”としての狂気が。



そして、その空の遥か上空。


漆黒の魔翼をはためかせ、ザガードが地上を見下ろしていた。


「さあ、アルよ……お前の正義とやら、今ここで終わらせてやる。お前が二度目の裏切りを選んだその時から、貴様の運命は決まっていたのだ。」


ザガードは、魔剣を抜く。


その刃からは、かつてアルが自ら設計した“魂の殺戮術式”が禍々しく煌めいていた。


「皮肉なものだな。貴様が作った術式で、貴様の魂を斬る……これぞ正義だ、アイゼンハワード!」


物語は、裁きの時を迎える。



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