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【ランキング12位達成】 累計57万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第1話 魔界より来たる者

挿絵(By みてみん)

かつて、魔界と人間界は、互いの存在を“毒”と呼び合い、

果てなき戦いを繰り返していた。

契約も和平も、幾度となく破られ、血は大地を赤く染め、

空に昇る魂は、もはや数えることさえできなかった。


その最中

魔界の中心、“深黒の玉座”に座す魔王は、静かに命を下した。


「アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウス。お前に命ずる。

人間の王国アレルシアに潜入し、内から崩壊の種を蒔け」


玉座の間に響いたその声は、重く冷たく、情の一片もなかった。

だが、命じられた者アイゼンハワードは、口の端を静かに持ち上げた。


「御意に。すべては、魔界の栄光のために」


胸に拳を当て、跪くその姿は完璧な忠臣。

だが、その内には、別の野望“王すら欺く野心”が燃えていた。



■■



その数日後。

アレルシア王国、北の国境付近。


夜明けと共に、異国の傭兵“アル*が、国境の砦に現れた。


金の瞳に長身、洗練された剣の技と完璧な礼節。

「魔族にしては人間らしすぎる」と後に語られるその男こそ、

アイゼンハワードの“仮の姿”だった。


挿絵(By みてみん)


「名はアル。失った祖国の名を問われるのは苦しい。身一つで剣を売って生きてきた」


そう語る彼に、誰も疑念を抱く者はいなかった。

人間は、思っていたよりも単純だ。

アルは内心でほくそ笑む。


【第一の任務:王女に接近せよ】


それが命じられた最初の任務だった。

美しくも高貴な王姫セーラ・ティアラ・アレルシアに接触し、

王族の足元を揺るがす情報を引き出すこと。

そのために、アルは“兵団傭兵”として、王都へと向かう。


「女など、所詮は情に脆い生き物だ」

「笑顔と礼節、そして少しの詩でも読んでやれば、容易い」


若きアイゼンハワードは、そう高を括っていた。

あのときまでは。


だが、彼はまだ知らなかった。


その女が、

その王姫が


魔界の魔王ですら屈しなかった“誇り”を持つ正しき者であることを。

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