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【ランキング12位達成】 累計57万5千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ』

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第5話 SAGAデート編「ここで暮らしても、いいですか?」

潮風がやさしく頬を撫でる、午後のサガ島。


丘の上の音楽教室にて、

ギターの弦をゆるめながらハルコはつぶやいた。


「……ねぇ、アイゼンさん。

 わたし、もう歌わなくてもいいんじゃないかって……思ってるの」


「……は?」


「ほら、ここって静かだし……人も優しいし……パン美味しいし……

 歌のこと、忘れても生きていける。

 それに、アイゼンさんとふたりで、こうしてのんびり暮らすのも悪くないなぁって……」


 と、ひとつ結んだポニーテールを風になびかせて笑った。


「……んだよ、急に」


「ほら、私って有名になっても、幸せじゃなかったから。

 でも今がちょっとだけ幸せ。ね、今日はSAGAデートしません?」


 そして、魔獣おじさん・アイゼンハワードとの

 “完全オフな一日”が始まった。


【SAGAデートその①:毒クラゲふれあい海岸】

「ちょ、なんでこのビーチ、全部ピンクのクラゲ浮いてるの!?」


「毒クラゲだ。触ると笑いが止まらなくなる“魔界ジョーク種”ってやつだな」


「それ絶対ヤバいでしょ!?」


 ハルコは海岸の岩陰に座り、タオルを広げて日光浴。

 アルはというと


「うおっ!? ちょ、おい、足に絡むなコラ!」


 なぜか毒クラゲにモテていた。


【SAGAデートその②:深海パン市場・焼きたてツアー】

「うわ〜っ、見て! この“マグマ焼きアンパン”! しかも耳つき!」


「魔界パンなのに、表面だけカリカリって何気に高等技術だな……」


二人は焼きたてパンを片手にベンチに並んで座る。

口の端にソースをつけたままハルコが言った。


「……ねぇ、アイゼンさん」


「ん?」


「……キス、してみる?」


「アンパン食いながら言うな」


「だって、ちょっとそういう雰囲気じゃない?」


「ないわ」


「ちぇっ」


【SAGAデートその③:夜の港と、手つなぎ散歩】

日が暮れ、潮騒と街灯があたりを包み込む。

ハルコはいつの間にか、アイゼンハワードの袖をつかんでいた。


「……おじさんの手、あったかいね」


「魔力が漏れてんのかもな」


「そっか……。なんか、ずっとこうしてたい」


アイゼンハワードは、ハルコの言葉に一瞬立ち止まる。

でもすぐに、何事もなかったように前を向いて歩き出した。


「……ここでずっと暮らしても、いいんだぜ」


「え?」


「別に、お前が何者だろうが関係ねぇよ。

 パン食って、寝て、笑って、それでいいんじゃねぇの」


「…………」


「でもな。もし、どっかの誰かが、お前が届けたい歌を待ってんなら

 それに応えるのも、悪くないってだけだ」


「…………ズルいよ、そういうの……」


 ハルコはそっと、彼の手を強く握った。


次の日の朝

「おじさーん、ちょっと買い出し行ってくるね〜!」


麦わら帽子、深海酵母パンのバッグを肩にかけて、元気よく駆けていくハルコ。


「ったく、すっかり馴染みやがって……」


そう呟いてベンチに腰かけたアイゼンハワードのポケットに、

一枚のチラシが入っていた。


【緊急告知】

新魔王就任式 国家斉唱歌姫、MADOに正式依頼!

「生きているなら、もう一度――」

所属事務所 連絡先 ▲▲ ー〇〇ー■■■




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