表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/1100

第十話 海底からの刺客

朝焼けの光が海面に反射する中、海賊船はゆっくりと進んでいた。

その静寂を破るように、船底から――異様な気配が立ち上った。


ゴゴゴゴゴ…!


「……ん?なんだこの音は……?」

俺がデッキに出た瞬間、海の底から巨大な影が現れた。


「で、でかっ……!」


それはまるで暗黒の大穴が浮かび上がってくるようだった。

そして長男エリックが、双眼鏡をのぞいたまま青ざめた顔で叫んだ。


「クラークだぁあああああ! 機雷班、準備せよ!! 急げっ!!」


船底から現れたのは、無数の触手をうねらせた深海の殺戮兵器・クラーク。

直径20メートルはある本体に、艦船を容易に引き裂く吸盤つきのシュク手が伸びる。


挿絵(By みてみん)


名前:クラーク

体力:1500

攻撃:800

防御:240

素早さ:10


この世界で一度狙った獲物は逃さない。シュク手で捕食し、墨で視界を封じる。水圧を操り船を傾ける能力ある。



エリックが冷静に指示を出す。


「右舷45度、主砲発射準備! 敵の触手に集中砲火だ!機雷班は起爆距離まで引き寄せろ!あの墨に入ったら終わりだ!」


「了解!」


「はい兄ちゃん!」

子供たちが慌てて機雷や大砲の準備を始めるが――


ググググ……!


「うわぁああああ!」

船がグラリと大きく傾いた!クラークの触手が船の下部に巻き付き、ゆっくりと沈めようとしている。


「もう時間がねぇ……俺たちがやるしかない!」

俺が毒針を構えたとき。


カツン…カツン…と裸足でデッキを歩く音が響いた。


「んん……朝からうるさいですわねぇ……」

寝ぼけ眼で、髪もボサボサ、すっぴん姿の黒魔術師マーリンが現れた。


「なんだよその顔……」

グレイスが鼻で笑う。


「すっぴんは酷いねぇ、あんた」


「……今、何か仰いました?」

マーリンの額に青筋が浮かぶ。


「あんたの顔のことだよ!」

マーリンはイラッとした顔で天を仰いだ。


「……朝からむかつきますわね、あのイカを焼いて差し上げましょう」

マーリンの周囲に魔法陣が浮かび上がり、空気がビリビリと震え始めた。



「――聞け、天空の星たちよ。我が言葉をもって星を導け、

星辰の王よ、凍てつく海に眠る業火よ、我が杖に応えよ!」


「《メテオクラッシュ・ノヴァインフェルノ》!!」


「天よ裂け! 星よ砕け! 終焉の光をこの大海に降り注げ!」


バリバリバリィィッ!!!!


天から降り注ぐは、直径10メートルの灼熱の彗星。それが次々とクラークの巨体に直撃。


ズドオオオオォォン!!!!


挿絵(By みてみん)



「ギィィイイイイィィィィ!!」

クラークがメラメラと焼け焦げ、暴れる触手がバチンと船体から剥がれ落ちる。


海上に次々と水柱が立ち、しばらくしてクラークは動かなくなった。


静まり返ったデッキ。朝日がもう一度射し込む。


マーリンはひとつあくびをすると、髪をくしゃっと撫でて微笑んだ。


「……朝食は、イカの丸焼きですわ。さぁ子供たち、召し上がれ♡」


「うおおおおお!うまそう!!」

「焼きイカー!!」

「タレつけてー!」


子供たちの喜びと元気な声が甲板に聞こえる。


「イカだけに、イカすオネェさんよ」


そう言ってマーリンは、また寝室へと戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ