エピローグ2 ダイマオウの魔王就任式
魔王城
漆黒の石で築かれたその玉座の間は、今日に限って光に満ちていた。
高い天窓から差し込む光が、赤い絨毯に神々しく落ち、
中央の王座に向けて、一歩一歩を照らしていた。
ドンと、足音が響く。
ダイ・マオウが歩みを進めるたび、静寂にいた十一人の仲間たちの目が彼を見つめる。
炎も凍てつく戦乱を越え、嘘も裏切りも蹴飛ばしてここまで来た。
ついに、「任侠と破壊の主役」ダイ・マオウが、新たなる魔王となる日が来たのだ。
ナンバ・ラッカは錬金薬を爆発させながら拍手し、
ユキネは静かに氷の剣を床につき、敬意を表す。
ウルウルは照れ隠しに耳をピクつかせながら、「お前、マジでやるんだな」と呟いた。
トランスジェンダーは筋肉を揺らしながら「あなたはもう、筋肉の王なのです」と微笑む。
ベビーサタン・さっちゃんは腕を組み、仁王立ちで叫んだ。
「わたしの極道教育のたまものね!」
その言葉に、玉座に立つ“新しき魔王”ダイ・マオウは微笑んだ。
赤黒いマントを背に、目は真っ直ぐに未来を見据えている。
その瞬間、彼の脳裏に幼き日の記憶がよみがえった。
■過去の記憶■
「いいかい、マオウくん」
ベビーサタン・さっちゃんは、眠る幼子の額にそっと手を置いた。
その声は、今とはまるで違う、静かなものだった。
「“仁”とはね、他人を思いやって、慈しむこと。これは五常の中でも、最高の徳目なんだよ」
小さなマオウは眠ったまま、眉を少ししかめる。
「そして、“義”はね。私利私欲ではなく、世のため人のために動くこと。誰かのために立ち上がる力。魔王ってのは、そういうものさ」
その夜、幼きダイ・マオウは夢の中で誓った。
“そんな魔王になろう”と。
■■■
ダイ・マオウは、皆に向けて振り返った。
「俺は、そんな魔王になる」
拍手が沸き起こる。
リーリアは師・サーテンリのローブを抱きしめ、目を潤ませた。
ダルツライは寝袋を被ったまま、親指を立てる。
シャルボニエは竜の背から降り、膝をついて忠誠を誓った。
風子はくるりと宙を舞い、妖艶な笑みで「ナイス演説♡」と囁いた。
ダイソン・サイクロンは「数式的にも君の徳は収束している」と呟き、
オーヤン・シャオシャオは小さなハーモニカで祝福の音を奏でた。
新しき魔王に祝福の言葉が集まる。
ナンバ・ラッカ(爆裂錬金術師)
「おいおい、ついにやりやがったな、兄貴!爆発は派手にやるもんだが、お前の生き様はもっとド派手だぜ。俺の最高傑作? それはお前さ、ダイ・マオウ!」
ユキネ(氷の剣士)
「…静かで深い湖のように、君の心には凛とした“義”がある。冷たく見えて、誰よりも熱い男…その名に恥じぬ王だ。魔王になっても、忘れるな誰かを守る剣であることを。」
ウルウル(狼ギャル)
「……マジで…アンタ、かっこよすぎんだろ…。誰よりもガンコで、誰よりも優しい…。
あたし、これからもずっとアンタの背中、見てるからな!魔王でも、あたしのダチだかんな!」
トランスジェンダー(回復系マッチョ大天使)
「肉体の強さだけじゃない。心のしなやかさ、優しさ、仲間を守る覚悟。あなたは、真の王にふさわしい。私の祝福を、全筋肉をもって、捧げます!」
さっちゃん(姐御と乳母上様)
「ふふ…ようやくここまで来たねぇ、マオウくん。わたしの“極道教育”も、まんざらじゃなかったみたいじゃないか。あとはアンタが、この世界に“仁義”を刻む番だよ!」
リーリア(風の魔術師)
「師匠も、空の上から見てると思う。あなたは風のように自由で、でも、誰よりも芯のある人だった。
私は…ずっとあなたの風になります。どこへでも、一緒に。」
ダルツライ(寝袋スナイパー)
(寝袋の中から)「祝砲…代わりに静かに祝います…。…寝袋から出る気はないが、心は熱く祝っている。王にして、最高の相棒へ。…うん、悪くない就職先だな、魔王。」
シャルボニエ(竜騎士姫)
「私は王家の誇りにかけて、あなたに忠誠を誓います。…でもね、あなたはそれ以上の存在。
仲間で、同志で、そして私が愛した、最強の魔王よ。」
風子(セクシー忍者)
「ふふっ、ちょっと前までケンカばっかしてたくせに、いまや世界のトップに君臨なんて…
色気も出てきたじゃない♡ じゃ、今夜はお祝いに忍者酒と行こっか~!」
ダイソン・サイクロン(数式の天才)
「君の決断と徳目は、まるで完全数のように美しい。非線形方程式も、乱数も、君の行動においては秩序へと変わる…。祝福するよ、我が“定理を超えた存在”ダイ・マオウ。」
オーヤン・シャオシャオ(伝説の歌姫の末裔)
「あなたが歩んできた軌跡は、まるで一つのバラードみたいだった。苦しくて、でも、美しくて。
だから、私は歌う“魔王讃歌”を。この声で、あなたの時代を祝福する!」
ダイ・マオウは一同に目を向け、深く、深く礼をする。
「ありがとう。みんながいたから、俺はここまで来られた。今度は俺が…お前らの盾になり、この世界の希望になる番だ!」
風子が声をあげた。
「よし、じゃあ記念撮影だよー! はい、整列してー!」
全員が笑顔で並び、さっちゃんが真ん中に仁王立ち、
ダイ・マオウの肩に手を置く。
最後にオーヤン・シャオシャオの号令が響く。
「せーのっ!」
「ダイマオウ、おめでとう!!」
カシャッ。
【記念写真】
魔王就任記念の写真が、黄金の額縁に納められ、魔王の玉座の間に飾られた。
そして
世界は、彼を“大魔王”と呼ぶ。
仁義と平和の、その名のもとに。
―完―




