表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/1101

第七話 帰ってきたバルドル

港町リーベルへ戻ってきたリスクたち。

勇者アルベルトとマーリンは港の役所で出航の許可申請中。グレイス・オマリーは海賊船で準備をしていた。


そんな最中――


「なんだか、町の空気がピリついてるな……」


「ええ、港の人たちも、どこかそわそわしています。リスクさん、気をつけてくださいね」


隣で祈るように指を組むシスターマリア。

俺は頷きながら、肩の物入れバックのヒモを軽く締め直した。


俺とシスターマリアは物資補給のため海賊船に載せる食料と水などを求めて、食料品店や道具屋を回っていた。


「次は水と保存食だな。あそこの角を曲がれば町の大きな橋の方に出られる」


「大きな橋の上に……? あ、あそこに見えるの、誰か立ってません?」


見れば、橋の中央に、ひときわ大きな影が風に揺れるマントをなびかせて立っていた。

鎧の隙間から覗く鋼鉄の肉体、背中には巨大な盾あれは。


「まさか……バルドル……!」


「よぉ、村人。久しぶりだな」

不敵な笑みを浮かべ、バルドルが歩み寄ってくる。


最悪の状況だ。人間であるバルドルは町を自由に出入りできるのだ。


挿絵(By みてみん)


―――――――――

名前:バルドル(戦士)

レベル:50

体力:1800

攻撃:683

防御:329

素早さ:127

魔力:10

賢さ:9

運:135

この世界で話が長すぎて人間に嫌われたため魔王軍に鞍替えした反逆の戦士。

―――――――――


「ゼロの能力者であるシスター……貴様を、ここで殺す」

バルドルは殺意に満ちている。


俺はシスターマリアを背にかばいながら叫んだ。

「バルドル、お前……ずっとこの町に潜んでいたのか!」


「そうだよ。町の長から聞いたんだ、お前らがまた戻ってくるって。だからな、ずーっと待ってたんだよ」


「ここで?」


「だからずっとここで待ってたのさ。橋の上で、かれこれ三日三晩もなァ……」


「三日三晩!? 雨も降ったのに……」


「屋根、ねぇだろ? 濡れたけど、心は燃えてたぜ!!」


リスクの脳裏に、(こいつマジでバカだ……)という思いがよぎる。

だが目の前の状況は洒落にならない。


リスクはシスターマリアをかばい、前に出た。

「……最悪の再会だな。シスターマリア、俺の後ろに下がっていてください。」


「バルドル!! ゼロの能力者だがな。実は俺がゼロの能力者なんだ」


するとバルドルは豪快に大笑いした。


「がはあっははあ!! 村人、シスターを守ためとはいえ、嘘をついちゃだめだろ」


だが、俺は知っている。そのゼロ能力には条件がある。


「シスターマリア!俺にディーペイトをかけてくれ!」


「リスクさん、まさか……でも、わかりました!」


「聖なる風よ、リスクに鈍足を《(ディー)ペイト》!」


リスクの足元に渦巻く風、重力が一気に身体にのしかかる。


【リスクの素早さが0から−45へ低下しました】


その瞬間、金色の光が全身を包み込む。

「発動した……ゼロの能力者のスキル!」



ゼロの能力者のスキル発動!!

《Lightspeed Executionライトスピード・エグゼキューション》――光速の実行。


閃光となった俺は、マリアを抱きかかえ、バルドルを橋の上で抜き去り一瞬で橋の奥、海賊船の近くまで移動した。


「よし、これで一時撤退だ!」


「おおーー村人すげぇええ! お前が、ゼロの能力者だったのか!」

後ろから、バカみたいに叫びながら追いかけてくるバルドル。

こっちは必死だというのに……。


港に停泊中の海賊船には、俺たちの仲間

海賊戦士グレイス・オマリーが出航準備をしている。


「グレイス、頼む!追いかけてくる、あの大男、足止めしてくれ!」


グレイス・オマリーが振り向き、にやりと笑う。


「任せな。あんなの大男一発ぶっ飛ばしてやるさ」


バルドルが立ち止まり、グレイスを見てピタリと動きを止めた。


挿絵(By みてみん)


―――――――――

名前:グレイス・オマリー(海賊戦士)

レベル:25

体力:410

攻撃:310

防御:180

素早さ:165

魔力:0

賢さ:520

運:183

この世界でエリザベード女王と交渉して唯一無二の国家認定の女海賊となった。

別名: 海賊女王 グリイス・オマリー

―――――――――


「……なんだ、お前……」


「ん? あたしかい?」


「お前……なんか、すっごくいい……!!」


「は?」


「おれ……お前と結婚する!!!」


「なに言ってんだ、あんたバカか?」


グレイスが口をあんぐり開けたまま、片手を腰に置く。


「いや、違うんだ。なんかお前、めちゃくちゃグッときたんだよ! 好きだ。そうだな……もう、これは結婚しよう!」


(おいおい……戦う気満々だったのに、いきなりプロポーズって……)

俺はバルドルが、いきなり結婚の告白とはバカすぎて笑ってしまった。


グレイスが眉をひそめ、呆れながらもニヤッと笑う。


「まあ、あたしに惚れるのも無理はないね。……いいよ」


「え?」


「結婚、してやるよ」


「おおおおおお!!! やったああああ!!」


港町に響き渡るバルドルの歓声。

俺とマリアは思わずつま先立ちして耳を塞いだ。


「じゃあ、明日結婚式な!!!」


「えぇーーー!マジですか」


港町のリーベルの崖にある教会で明日、女海賊 グレイス・オマリーと 反逆の戦士 バルドルの結婚式が行われることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ