第5話 バイシャルとセクシャルの子孫、まさかの降臨!?《回復魔法なのに地獄!? 俺のマッチョはデカイ》
激戦の果て
ダイ・マオウたちはトロール軍団、ゴーレム軍団の猛攻を退けたが、その代償は大きすぎた。
リーリアのローブはボロボロ。
ラッカのゴーグルは砕け、爆薬も尽き、
ユキネの刃にもヒビが入り
そして、ダルツライは寝袋のまま流されていた。
満身創痍。次の一撃を受けたら、誰かが倒れる。
その時だった。
天が裂けた。
金色の後光とともに、“大天使の筋肉”が舞い降りた。
「この世界に……癒しを届けに来たぞ。
天より現れし、回復系マッチョ大天使
我が名は……トランスジェンダー!」
名前:トランス・ジェンダー(通称:トラ兄)
種族:天使(バイシャル&セクシャルの子孫)
性別:超越済(性別を名乗るより筋肉を名乗る)
職業:抱擁回復魔法(物理系)
特技:ギュウ抱き、癒しの包容、聖筋波動
口癖:「癒しとは……俺のマッチョだ」
ラッカ「なんやアレ!? 聖光からマッスル出てきたで!?」
リーリア「癒し系であって欲しいけど、ビジュアルが殴ってる系……!」
トランス「疲れてるね、君たち。ではまず君からだ。ダイ・マオウ!」
ダイ「え? 俺? いや、俺はだいじょ──」
むんずッ!!(ハグ)
バキィィィッ!!!(脊椎音)
トランス「我が必殺! “地獄のゆりかご”!!」
ダイ「アアアアアア!!!!! なにがゆりかごや!!!!!」
トランス「次は……そこの包まれてる子。寝袋の中まで包んでやろう……」
ダルツライ「や、やめっ……ちょ、近寄んないでッ! てか、密着しすぎぃぃ!!」
“マッスル・スリープ・コンプレッション”!!(ハグ)
寝袋ごと抱きしめ圧縮されるダルツライ。
結果、姿勢が良くなり「腰痛が治った」と後に語る。
リーリア「私は魔力で自己再生できるので、回復は――」
トランス「断る理由はないッ!(むんず)」(ハグ)
リーリア「ぴぎゃああああああああ!! 魔力の流れが、逆流してるぅぅぅ!!」
ユキネ「……ちかづくな」
トランス(うるんだ目で)「氷のように冷たいキミこそ、あたためたい……♡」(ハグ)
ユキネ(刀を抜きかけ)「……もうやめろ。永久凍土にすんぞ」
※本当に吹雪が起きる。
トランス「ふっ……みんなに、わたしの愛の癒しが届いたようだね。
心も体も、全身で受け取ってくれて……ありがとう……」
リーリア「全然ありがとうじゃない……」
ラッカ「骨の数、さっきより増えてへんか……?」
トランス「では、次に疲れた魂が現れたとき……俺のマッチョな胸に、帰っておいで!」
ブワァァァァ!!(飛翔音)
空高く舞い上がる、聖なるマッチョの背中。
天使は夜空を超え、まるでスーパーマンのように飛び去っていった。
リーリア「……いや、なにこの回……」
ユキネ「たぶん、また来るな……あれ」
ダイ「……悪くはなかった、かも」
ラッカ「それ、末期やぞ」
筋肉と抱擁と回復のすべてを超えた者
それが、大天使トランス・ジェンダーである。




