第3話 シャルボニエ登場《竜の騎士、優雅に現る》
騎竜は空を裂き、誇りは風に舞う。
優雅にして烈火、シャルボニエ率いる竜騎士団、が竜の国ドラゴより出撃した。
空が、鳴った。
雷でもなく、爆発でもなく
それは、数十の竜の咆哮。
金、緋、翠、蒼……多彩な鱗が、空を彩る。
先頭に立つは、紅のドレスと白銀の鎧を纏う騎士。
「我が名はシャルボニエ・ド・ラ・ヴァルモン!
ゼロ部隊の竜騎士団第二十七代団長として、我らここに貴殿らを討ちに参りましたわ!」
勇者と魔王の血を継ぐ者ダイ・マオウ。
その存在を脅威と認定し、竜騎士団総出で制圧に来たのだ。
「うおぉぉ!祭りやぁああああああああ!!!」
爆音と共に飛び出すナンバ・ラッカ。両手の導火線に火をつけながら笑う。
「こらこら!わたしまだ寝袋の中だからっ!」
寝袋からライフルだけを突き出し、ダルツライが正確に空を撃ち抜く。竜の鞍だけを撃ち落とす精密射撃。
「……風の流れが変わった。あそこだね」
ユキメは氷気をまとい、空に舞う一人の騎士に狙いを定める。
「氷刃・月落――。」
その一太刀、空を駆ける竜の尾を斬り落とした。
風が渦巻き、リーリアのローブが空を裂くようにはためいた。
魔力の風圧で草木がうねり、竜の翼すらたじろぐ。
彼女の口元が、静かに開かれた。
「風よ! 迷いし刃となれ。
交差し、穿ち、すべてを切り裂け。
シーザース・ウィンド!!」
詠唱の終わりと同時に、リーリアの両手から奔流する二重の風刃。
空間を“✕(クロス)”に切り裂く、高速交差斬撃。
二つの大気の刃が交差する瞬間
まるで巨大なハサミが開閉したかのように、前方の大岩も、魔獣の装甲も切り裂いた。
「ズシャァッ!!!」
一閃で、音もなく真っ二つ。
風が止んだとき、敵もまた沈黙した。
リーリアは微笑んで言う。
「風はね、踊らせるより、切らせる方が得意なの」
竜の空中編隊と、地上のゲリラ部隊、戦場は混沌と化す。
しかしその渦中、シャルボニエとダイは静かに対峙していた。
「わたくしが民のために戦うなど当然の義務ですわ!」
シャルボニエが槍を構え、華麗に旋回しながら叫ぶ。
「地上と魔界の均衡を崩す存在、あなたが噂の“ダイ・マオウ”ですのね?」
ダイは無言で構え、すぐさま迎撃。
竜の咆哮とともに空中戦が幕を開けた。
魔法、銃弾、雷槍
風と氷と鉄が交錯する天空の死闘!
リーリアの援護魔法が風を操り、シャルボニエの竜槍が稲妻を纏って突き刺す。
ダイはそれをギリギリで受け流し、反撃の銃弾
一発が、竜の羽をかすめた。
「くっ……このわたくしの騎竜を、傷つけるなど……!」
怒りを見せるも、その眼差しはどこか揺れていた。
ダイは真っ直ぐに言った。
「民草のために戦う? なら、俺たちは同じだな。だったら、誰かに命令された正義じゃなく。お前自身の目で見て決めろよ。」
その一言に、心を撃ち抜かれた。
(この者……粗野に見えて、信念のために生きている。わたくしと、同じ……いえ、それ以上に――)
だが突如、撤退命令が発される。
「撤退ですか!? 今まさに、心が……! いえっ! 了解しましたわ!!」
シャルボニエは竜に乗り、一言残す。
「今回は引き下がりますわ、ダイ・マオウ。ですが、民草を脅かすなら、次はあなたを断罪いたしますわ!」
ユキメは、空を見上げ、ひと言。
「……あの貴族、いい目をしてる。」
ラッカは大興奮。
「はぁ~~~竜の女ってええなぁ!!!空飛ぶ爆発も映えるし!もう俺、恋やわッ!」
ダルツライは寝袋の中でごろごろ転がりながらぼそり。
「な、なんであんなのにドキドキしてんのよ……バカじゃないの……でも、あのドラゴンの乗りこなし、ちょっと……いいセンスしてるかも……」
竜の背に乗り、風のように去っていく彼女。
その頬には、ほんのりと赤みがさしていた。
リーリアはぽつりと呟いた。
「……やられたわね、あれは完全にダイに惚れてるわ。」
風が止み、竜騎士たちは去っていった。
だがこれは終わりではない。
彼女たちは、再び必ず現れる。そう予感した。




