第六話 切磋琢磨(せっさたくま)
港町リーベルへと戻るために海岸線を歩く俺たち
「……おい、ちょっと待て。あれ、なんかまずくねぇか?」
俺と勇者アルベルトが振り返ると、そこには想像以上に殺気立った空気があった。
マーリンとグレイス・オマリー。
ふたりの間に走る静電気のようなピリピリとした緊張感。
口角は吊り上がり、目はギラつき、笑顔の裏に殺意が見える。
「ふふ……あなた、今度はどんな“くだらない見せ場”で目立つつもり?」
マーリンが冷ややかに言う。
「見せ場? あんたの無表情な棒読み詠唱よりマシでしょ?」
グレイスが鼻で笑う。
バチッッ!!!
火花の音が聞こえるような眼光の衝突。
そんな中、モンスターが姿を現す。
巨大な貝のシェルハンターと暗黒の雲のクラウドエッジのモンスターだった。
名前 シェルハンター
体力 : 330
攻撃 : 125
防御 : 286
素早さ:210
この世界で巨大な貝に籠もり、正確無比な矢を放つ。
名前 クラウドエッジ
体力 : 400
攻撃 : 15
防御 : 120
素早さ:300
この世界で雲のように姿を変え、空から切り裂く魔法の刃で襲いかかる。
「また新しいモンスター……こいつら強いぞ……!」
勇者アルベルトが剣を構えるが、前に出たのはあのふたりだった。
「……そこの貝殻、煮る価値もありませんけど。
あえて言うなら、ここであなた(グレイス)との違いを見せつけておきましょうか」
マーリンの目が細くなる。
「海よ、空よ、すべての命よ……いま震えるがいい……!
千の波を束ね、怒りの渦を放て――」
《アクア・ブレイク・グラン・ノア》ッ!!」
足元から大地が割れ、巨大な渦潮が巻き起こる。
「巨大な渦よ、集え! 削れ! すべてを飲み込め!!」
シェルハンターが悲鳴を上げる間もなく、貝殻ごと粉々にされた。
「おい、勝手に終わらせんなよ。アタシの出番、残しておけっての」
グレイスがキレ気味にクラウドエッジへ突進。
「踊りな!……これが死のバラッドよ!雲野郎!」
《デッドリィ・バラッド》!!」
ブォンッ!
カトラスが弧を描く。
グレイスの身体が踊るように回転し、宙に舞う。
ブォンッ!シュシュシュルッルゥゥウ
剣が円を描くたびに、雲の一部が裂け、弾け、霧と化して消える。まるでミキサーの中に放り込まれたかのような斬撃の嵐。
クラウドエッジは最後、静かに風に散った。
「ふん、これが“本物”の華ってやつさ」
「ま、まあまあ……お互いナイスだったよ!あははは……」
俺は冷や汗をかきながらも、無理やり場を和ませようとする。
「ほらほら、なんだかんだ言って仲いいんじゃーん? ケンカするほどってやつでさ?」
「仲良くなんて、一言も言ってませんわ」
「ふざけんじゃないわよ。こいつの顔見るだけで虫唾が走るわ」
グレイスとマーリンが同時に俺を睨んだ。
しかしそれは思わぬ方向へと動いた。なんと今までザコ戦でやる気のなかった。マーリンが人が変わったかのように戦闘でやる気をだしはじめたのだ。それはある意味ライバルが出来たことによる切磋琢磨による、やる気ではないかとリスクは分析するのだった。