第2話 ダイ・マオウの実力『目からビームに意味はない』
草原は、風が気持ちよく吹いていた。
「ふぅ、今日こそは静かに旅ができそ……」
ドドォン!!
突如、大地が揺れ、目の前の丘がモコモコと盛り上がる。
次の瞬間、ゼリーのようにぷるんぷるんと揺れながら、王冠のついてる巨大な青いスライムが現れた。
「……キングな、スライム?」
リーリアが眉をひそめた。
その大きさ、実に小山サイズ。
下手に攻撃すると、飲み込まれて酸で溶けそうなビジュアルである。
だが。
「おおおおおぅしッ! やったるかいコラ~~ッ!!」
ダイ・マオウ、突然シャツを脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっとダイ!? 脱ぐ意味ある!?」
「あるッ! 心の準備やッ!!」
謎の関西弁とともに、ダイは全力でスライムを殴った。
ぷるん。
「効いてねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
おまけに蹴る。
ぷるんっ。
「効いてねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ダイ! スライムに打撃は効かないってば! 魔法か炎じゃないと!」
リーリアがツッコミを入れながら呪文を詠唱しようとしたそのとき。
ダイが突如、静かになった。
そして、無言でリーリアを見たまま、テレパシーを送ってくる。
《たま、とってやる……》
「なにが!?!? なにの!?」
直後
ダイ、目から謎のビームを発射。
ピカーッ!
ズギュゥゥゥゥゥン!!
草原に、意味不明な焦げ跡が残っただけだった。
「……ビーム、意味なくない!?」
リーリアのツッコミが風に虚しく響く。
が、ダイは真顔だった。
「いや、これは“気合い入れ”や」
「それ任侠映画の“目つき”の話でしょ!!」
すると今度は、ダイがどこからともなく二丁拳銃を取り出す。
(どこに隠してた)
「……オレはな、“魔王”やない。“修羅”や」
「だーかーらー!! そのセリフどこから拾ってきたのよ!!」
ドガガガガガガガガガッ!!
狂ったように銃を撃ちまくるダイ。
スライムは「プルプルッ!?」と音を出しながら、穴だらけになって地面に沈んでいく。
最終的に、スライムは「ごぷぅ」と泡を吐いて消滅した。
「……やった、倒した」
リーリアはため息。
「ふっ、名乗るほどの者でもないが……」
と、決めポーズで振り向くダイ。
「名乗ってないじゃん!!!」
草原に沈む夕陽。
風に舞う二丁拳銃の薬莢。
リーリアは思った。
(この先の旅、絶対に平穏じゃない……)
だが、なぜか笑っていた。
(なんで任侠ぽいのこいつ。)




