第8話 対決!錬金コンテスト(なお爆発率100%)
ある日のこと。
いつも通り、パンまみれで天井が吹き飛んだラボに
「はいはーい! 爆発してる場合ちゃうでぇ! 見てみぃ!」
ナンバ・カゲツが、焦げた封筒をバンとテーブルに置いた。
「『第234回・地上連合合同錬金コンテスト』……?」
「なになに……主催:中央学術錬金術評議会……優勝賞品は……」
「……“試験管1年分+実験室1棟まるごと贈呈”!?」
「めっちゃ欲しい!!」
「……いや、でも、条件あるで」
カゲツが真剣な顔で封筒を逆さにすると中から一枚の注意書きがヒラリ。
「※優勝条件:爆発させないこと。」
「……え、むしろムリやろ……?」
「私たち、爆発しないと錬金術できないタイプだよね……?」
「爆発音=成功音やからな、うちの文化的には」
しかし、屋根をもう一度直す手間と、賞品の魅力には勝てず3人は重い腰を上げて、コンテストに出場することにした。
当日。
広大な円形競技場に、錬金術師たちがずらりと並ぶ。
・空飛ぶ花を錬成する学院代表チーム
・元素変換に長けた王立研究所の博士チーム
・毒霧から花を咲かせる幻想錬金の森組
そして
ラボごと煙を上げながらやってきた、ドジっ子天使&関西爆破術師トリオ
「うちら、浮いてない!?」
「むしろ危険物扱いやな……」
司会「第234回・地上合同錬金コンテスト、いよいよ開始です!
テーマは『美しいもの』!」
「爆発って美しいよなあ」
「うん、でも今回は爆発したら失格だよね?」
「え、え、むしろどうやって耐えるの……!?」
バイシャル「お花を錬成してみせます!……たぶん……」
→→触った瞬間、花が咲くと同時に火花も散った。
→→司会「バチバチ言ってる!? 熱っ!? 熱い!!」
セクシャル「ガラス細工を……キラキラきれいな……きゃっ、転んだ!」
→→魔力と素材が混ざり、シャボン玉のような大爆発。
ナンバ・カゲツ「この試験管、いじらなければええだけや! 触らへん、投げへん、混ぜへん、
見てるだけで勝てるわ!……って思ってたら風で飛んだぁああ!」
→→試験管、地面で粉砕 → 大爆発。
観客「ぎゃああああああああ!!」
審査員「どのチームもそれなりに失敗はあったが、ここだけ焦げ跡が深刻です!」
主催者「失格!!しかも二度と出場禁止!!」
そのとき、場に響く低い声。
「……待て」
現れたのは、鎧をきらめかせた地上の英雄・勇者アルベルト
「この者たちは……爆発を恐れず挑んだ。そして、笑っていた。爆発の中に、希望と前向きが詰まっていた」
「私が昔、命を救われたのも……カゲツの“納豆と爆発パン”だった……」
「錬金術とは爆発だ!!!!!」
観客「おおおおおおお!!!」
司会「な、なんと勇者アルベルトの鶴の一声で……!!」
主催者「ぐぬぬぬぬ……まあ、確かに……感動した……っ!」
結果
優勝は別チームになったが、
カゲツたちには“特別賞:感動の火薬魂賞”が贈られた。
副賞は「屋根用タイル30枚」
「地味やな……!」
「でも嬉しい……!」
「また爆発しても安心やな……!」
こうして、またひとつ“成功ではないけど前向きな失敗”を重ねた3人。
ラボへ帰る道のりで、セクシャルが笑って言った。
「ねぇ……次は何を爆発させる?」
「……パン、またやる?」
「増殖するパンの続編もやらなあかんしな……」
「うん、ぜったい失敗するけど、楽しみ!」
元夫の勇者アルベルトの鶴の一声で、なんとか出場停止は、免れた。
コンテストのみんなには、内緒である。




