表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/1101

第五話 同族嫌悪・ オラオラ対決

ウィンザー城で女王からの紹介を受け、新たな仲間「海賊戦士 グレイス・オマリー」が俺たちの元に加わった。


グレイスは鋭い目つきと、戦いで鍛えたような引き締まった体つきで、海の風に晒されたような褐色の肌。腰にぶら下げた大ぶりのカトラス(湾曲した刃を持つ、片手で扱う刀身が短い刀)が、只者じゃないことを物語っていた。


俺とグレイスは、城の外で待っていたマーリンとシスターマリアのもとへ向かった。

シスターマリアが柔らかく会釈する中、グレイスが不敵な笑みを浮かべながら、両手を腰に当てて堂々と名乗る。


「あたしの名前はグレイス・オマリー。海賊にして戦士、そして最強の船長よ。今日からアンタらと海竜退治だ。覚えときな」


その瞬間――


後ろでふわっと腕を組んだまま、黒魔術師マーリンが盛大にあくびをかました。


「ふぁあ〜〜……うん、野蛮な海賊さんね。はいはい。お名前、覚えておきますわ……一応ね」


グレイスの表情がピクリと動く。


右の眉がぐいっと吊り上がり、笑みが徐々に消えていく。唇の端がキュッと吊り上がり、目元には鋭い光が宿る。


グレイスが低い声で


「……今、アタシの自己紹介中だったんだけど?」


マーリンは腕を組んだまま、つまらなそうに片目だけでグレイスを見る。その瞳はどこか小馬鹿にしたように細められていた。


「聞こえてましたわよ?でも正直、興味が湧かない内容でしたもの。粗暴で無教養な女海賊の自慢話なんて」


その言葉に、グレイスの表情が一変する。


目がギラッと光り、鼻から荒い息を吐き出した。こめかみに青筋が浮かび、拳がギュッと音を立てて握られる。


「ハァァァ!? てめぇ今なんつった!?」


「あら、通じなかった?ゆっくり言いましょうか。“興味が、ない”のですのよ。あなたのような低俗な――」


「てめぇ、年いくつだよ?年上にその態度、舐めてんのかコラァ!」


マーリンが目を細めて冷笑した。


「年齢で上下を決めるなんて、いかにも頭の悪い人間の発想ですわね。力も誇りも“年”で決まるなんて、お笑いですわ」


バチッ!と火花が散った。


グレイスとマーリン、互いに半歩踏み出し、額がぶつかる寸前の距離。睨み合い、どちらも一歩も引かない。シスターマリアは静かに後ずさる。


「その澄ましたツラ、ぶん殴ったらどんな顔になるか楽しみだなァ!」


「ふふ、下品な言葉。やはりあなたには知性も品も感じませんわ。まるで野犬やけん


「上等だテメェェェェ!!! タイマンだ表へ出ろ!!」


「やりますの!? 今 、外にいますけどね。」


「ちょ、ちょっと待って!ストーップ!もう勘弁して……」


俺は両手で頭を抱えた。


冷や汗が背中を流れ、頭の中で「やばいやばいやばい」と警鐘が鳴りまくる。せっかくの新戦力なのに、初対面からぶつかり合いってどういうこと!?


「あァ!?村人は黙ってろ!」


「同感ですわ、村人はひっこんでなさい。」


「ぐっ……!ちょ、ちょっと提案!提案させてくれ!」


ふたりの怒気が俺に向いた瞬間、俺は絞り出すように言った。


「……海竜リヴァイアサン、あいつを先に倒したほうが“勝ち”ってのはどう?お互いの実力で決めよう、ってことでさ」


一瞬、静寂が降りた。


グレイスとマーリンが同時に俺をじっと見つめる。険しかった空気が、ふっと変わる。


グレイスがニヤリと笑う


「……ふん、悪くねぇな。それでこそ勝負だ」


マーリンが薄く笑った。


「そのルール、受け入れますわ。“実力”なら、文句なしですものね」


「ふぅ……」


俺はようやく肩の力を抜き、ぐったりとその場に座り込みそうになった。


アルベルトは腕組みしながら笑っている。


「やっぱ喧嘩するほど仲がいいって言うしな〜、うんうん仲がいい」


シスターマリアは、無責任な発言をする。勇者をみて呆れていた。


「勇者様は本当にお気楽ですね……」


マーリンの毒舌に、グレイス・オマリーのブチ切れパンチが炸裂寸前。お互い譲らない気の強さ、俺は見てて胃が痛ぇ。


これ、間違いなく“同族嫌悪“ってやつだ。


表向きは「お前の生き方気に入らねぇ!」って言ってるけど、たぶん心のどっかで「自分に似たタイプがもう一人いる」ってことに無意識でイライラしてんだろうな。


マーリンはプライドの塊。自分は選ばれた天才だって思ってるし、他人に舐められるのが大嫌い。

グレイスは直情的だけど、実は誇り高くて義理堅い。海で揉まれて、誰にも頭下げたくないって気持ち、たぶん骨の髄まで染みついてる。


どっちも「自分の価値観を曲げられたくない」タイプなんだよなぁ。


そして、似てるからこそ認めたくない。

似てるからこそ、張り合いたくなる。

……ああ、これはもう火と火がぶつかってるだけ。水がねぇ。オレ補給係だし水を補給しよう。

って完全に消火係だよ。


にしても、こういうのって他人事で見てる分には面白いけど、

物資補給係としては、マジで地獄。


パーティーの空気が最悪です。

いやほんと、誰か代わってくれ。

(リスク)は、もっと、みんなが楽しい仲良しな旅がしたいんですけど?


こうして、まさに“オラオラ”同族嫌悪な女たちの火花散る出会いは、命懸けの勝負へと昇華された。


果たして勝つのは


海賊女王 グレイス・オマリーVS 魅惑の黒魔術マーリン


どっちだ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ