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【44万6千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『1回の成功と999回の大失敗すれば成功やないの! 』〜ドジっ子双子天使と爆発ツッコミ錬金術師のポジティブ錬金ラボ〜
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第5話 双子天使の堕天の理由と、少しの過去

いつものゴミ屋敷ラボ。

今日は珍しく、穏やかな午後だった。


煙もない。爆発もない。鍋もキノコも生えていない。


セクシャルとバイシャルが、風の通る窓辺で並んで座っていた。


「ねぇ……セクシャル」

「んー?」


「なんで……私たち、堕天したんだっけ」


「えっ、今さら?」


少しの間、沈黙が流れる。


そしてセクシャルがポツリと呟いた。


「……人間界の服、かわいくて。着替えてたら、怒られた……」


「え?」


「教会の裏でね。フリフリの下着とか、レースのワンピースとか……ちょっと着てたら……」


「えっ、それだけで堕天!?」


「うん。“神聖なる衣を脱ぐなど言語道断”って、長老様が……」


セクシャルは膝を抱えて、ちょっと涙目だった。


「わたし、ただ……かわいくなりたかっただけ、なのに……」


その横で、バイシャルが顔を真っ赤にしながら言った。


「……わたしなんか、男の人を裸にしちゃったのに……」


「ちょっ……!? バイシャル姉ちゃん、それどういう……!?」


「いや!ちがっ……! あれは!“人間のからだの構造を学ぶ”って授業のつもりだったの!でも“服を一瞬で消す術”を試してたら……全部消えちゃって……」


「それ完全にアウトやんけぇぇぇぇ!!!」


と、そこへカゲツが唐突に乱入。


「ええやん!人間も天使も裸でええ時代や!裸は命の原点やでぇ!!」


「そういう問題じゃないの!!」


「アダムとイブもそうやろ?“知恵の実”かじって、恥じらい覚えて服着ただけや!つまり、服着るほうが不自然なんや!!」


「なんか急に宗教画みたいな話になってきた……」


3人がごちゃごちゃ言い合っていると


ガタンッ!!


どこからか棚が崩れ、埃をかぶった古びた革表紙の本が床に落ちた。


「……ん? なんやこれ」


表紙には


《禁断実験録:ナンバ・カゲツ》


「げ、これウチの黒歴史ノートやん……!」


「開けたらだめなやつ……?」


「めっちゃダメなやつ!!」


……だが、ページはひとりでにバラバラバラッ!と開き、中から無数の光と蒸気が噴き出した!


「うおぉぉぉぉ!? なんか出てきたー!!」

「記憶の魔法……? いや違う!これは具現化術式!」


「ぎゃあああああああ!!

カゲツさんが昔やろうとしてた“人格持ちパンツ”が浮いてるぅうううう!!」


部屋中を飛び交う謎の実験具

しゃべるホウキ、涙を流すスライム、ハイテンションなズボン、

そして謎の関西弁のしゃべる鏡「わいが本物のカゲツやで!」


「ウチの記憶が勝手に錬金術で暴走しとるぅうう!!!」


「どうすんのこれ!? なにこのカゲツワールド!!?」


爆音! 煙! パンツの主張!


……ラボは一瞬で、再びいつもの混沌と爆発に包まれた。


夜。

天井の穴から星が見えるほどに荒れ果てた研究所で、

3人はボロ布をまとってぐったり座っていた。


「……なぁ。堕天って……もしかして……」


「うん……」


「今もまだ続いてる気がする。」


「うちに来た時点で覚悟してたやろ!?」


でも。


爆発だらけの毎日でも、

パンツが吹き飛んでも、

キノコが生えても。


みんな、ちょっとだけ笑っていた。


きっとそれは、

天界よりも、ちょっと自由で、ちょっと恥ずかしくて、でもとってもあたたかい世界だったから。

「よくわからんけど、いい話や!」とナンバ・カゲツがツッコんだ。


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