第1話 堕天と転職と大爆発
天界をクビになったドジっ子双子天使「バイシャル」と「セクシャル」は、地上で更生プログラムに参加中。しかし、なぜか配属されたのは錬金術研究所という名の爆発ラボ。
そこで出会ったのは、実験で999回爆発してもケロッとしているマッド関西人・ナンバ・カゲツ。今日も笑顔で爆発!今日も泣いて転ぶ!
これは、毎日が大失敗の連続だけど、なぜか心は前向きになる、天界リストラ組と錬金お笑い暴走機関の「ポジティブ爆笑錬金」ストーリー。
【登場人物】
天使 バイシャル(姉)
姉として妹の面倒を見ようとするが、たいてい先に転ぶ。真面目に作業していても、爆発を巻き起こす才能がある。自分がドジなことを認めたくなくて言い訳が多い。天界では「落とし物多発天使」と呼ばれていた。
天使 セクシャル(妹)
何をしても“ほんのちょっとだけずれてる”。服の着方やラボのルールもほぼ覚えていない。
「かわいい」と「ドジ」が混在しており、周囲の誤解を呼びやすい。天界を追放された理由は「聖堂でラブソングを歌った」から。
ナンバ・カゲツ(錬金術師)
錬金術師としての才能は本物。しかし99%が爆発する方向に発揮されている。すべての失敗を「成功に至るプロセス」として受け入れる器の大きさ。実験での爆発数、地域最多。火災保険も拒否された記録あり。表情豊かで、双子にもツッコミと褒めを絶妙に使い分ける姉御。
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天界中央庁・労働天使課。
神の右腕を自称していたはずのバイシャルとセクシャルは、今
「解雇通知……で、ですか……?」
「サイン、これですか? あっ、転んだっ……いたっ……パンツ見えたぁ……」
「姉さん、泣きながら署名してる……」
「そ、そんなん無理ぃぃ……堕天ってなにぃぃぃい~~~!!」
天界史上最もドジな双子が、ついに地上へと“堕とされた”。
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「よし、じゃあ今日からウチがあんたらの更生担当や!」
目の前で自爆音をバックに笑顔を浮かべる関西弁の女性こそ、地上の爆発の神(自称)、ナンバ・カゲツ。彼女は地上国家直属のゼロ部隊・科学兵器開発部、通称「爆発部」所属のマッド錬金術師である。
「え、あの……更生って……このゴミ屋敷みたいな場所で?」
「なあセクシャル……これ研究所じゃなくて、火事跡では……?」
「違うわアホ! 立派な爆発ラボや! 錬金術の夢と希望が詰まっとる! ホコリも詰まっとるけどな!」
カゲツが投げたビーカーが「ピューッ」と空を飛び、
そのまま薬品棚に突き刺さった。
——ドッカァァァン!!
天井が吹き飛び、謎の虹色の煙がもくもくと上がり始める。
「はっはっは!! 爆発音は人生のBGMやでぇ!!」
「え、火事じゃないんですか?!」
「こんな毎日なの?! こんなの天界にないぃぃ……」
「うっ……パンツ見えたぁ……!」
「なあ、なんでアンタら天界から追い出されたん?」
「私は神殿で間違って魔方陣を“LOVE”って書いちゃって……」
「私は天使のラッパで演歌を吹いちゃって……」
「おもろいやん!! そういうのウチ好きやでぇ!! 才能あるで!」
カゲツは爆風のなかでガッツポーズ。天井からは謎の液体がポタポタ……。
「さあ! まずは挨拶代わりに、実験やってみよか!」
「えええ!? まだ準備してないです……!!」
「失敗してからが、準備の本番やろ? ウチのモットー、聞いたことあるか?」
「……ないです……」
その時、カゲツが笑った。
「1回の成功と999回の大失敗すれば成功やないの!」
「……爆発しないといいな……」
「いや、爆発はするやろ」
「ほら、もうパンツ見えてる……」
そして第1回実験。
セクシャルがうっかり配線を踏み抜き、バイシャルが試薬をぶちまけ、カゲツが笑顔で火をつける。
――ドッカァァァァァン!!!!――
天井がふっとび、空からは羽が舞った。
だが、そこに悲壮感はない。
「うん、ええ爆発やった。合格!!」
「えっ、合格……なんで……?」
「ドジやけど、ドジも極めれば才能や。ここはドジも爆発も歓迎やで!!」
こうして、ドジっ子双子天使と爆発マッド錬金術師のハチャメチャ研究生活が始まった。
続く