第13話 音痴革命、地上制圧へ
――地球は音楽で狂うか、救われるか――
【音楽の首都】
西暦9999年。
音楽文明の粋を集めた芸術都市、メロディアシティ。
そこでは年に一度、“世界音楽最高審問会《ヴォーカロニア裁判》”が開かれる。
今回の裁判の被告人:音痴デュオ・デス・エンンジェル
罪状:歌で建物を3大陸分破壊、150万人を昏睡させた疑い(※実際は肩こり治療効果もあり)
迎え撃つは、
「正統派美声軍・ソナリア騎士団」。
その頂点に君臨する、絶対音感の女王・セリーネ=ハルモニア。
セリーネ「音を乱すものは、音楽を愛していない。あなたたちに“歌”を語る資格はありません」
◇新曲:「音痴は地球を救うのか?救わないのか?教えて?」◆
(ジャンル:爆音ポエム×哀愁パンク×精神汚染バラード)
歌詞フルバージョン(耐耳力★★★★★/聴覚と理性の戦い)
(イントロ:爆音の中にささやくような破壊音)
オンチリーナ:
♪ きみは……地球を すくいたい……って おもった こと……ある……?
わたしは……とくに……ない……Zzz……
フェーフェー:
♪フゥオアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
(訳:でも歌いたいだけなんだよ!!)
ふたり(地割れしながら):
♪ 音痴でぇ〜〜〜〜〜〜〜も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
すくえるかもおおおおおおおおおおぉおおおおおおお〜〜〜〜〜(爆発)
地球の~~~~~~~すみっこぐらしィイイィィィィ!!!!!
(観客:頭を抱える)
観客A「知らねぇよ!!」
観客B「寄付金ねだるんじゃねぇよ!!偽善者が!」
観客C「地球より耳が救われてねぇよ!!」
オンチリーナ(幻聴気味):
♪ だけどね……うたってたら…… だれかのこころが……あったかくなるって
……しんじてる……Zzz
フェーフェー(足でマイク踏み潰しながら):
♪フゥォアアアアアアアッ!(訳:信じるしかねぇだろうがァアア!!)
ふたり(おそらくハモり)
♪ うまくないのが……いけないの?
ちょっと……リズム……ズレただけだよ?
ちょっと……音階……自由なだけだよ?
ちょっと……歌詞……忘れただけだよ?
ちょっと……ステージ……崩しただけだよ?
ちょっと……観客……気絶しただけだよ??
(爆発音。舞台にヒビ)
観客(生き残り)「“ちょっと”の定義が全然ちょっとじゃねぇよ!!」
ふたり(崩れゆく照明の中で)
♪ 愛で歌えば 地球は回る?
破壊で叫べば 地球は止まる?
じゃあさあああああああああ!!!!
\\どっちなの!?//
(Cメロ:哲学ゾーン)
♪ 音痴ってさあ……
なんかこう……
すごくこう……
魂の叫びじゃん?(爆音)
観客「雑すぎんだよ!!」
ラスサビ前シャウト(フェーフェー)
♪フゥゥオオオオアアアアアアアアアアアッ!!!!!(訳:それでも私たちは歌うッ!!)
ラスサビ:
♪ 音痴は 地球を 救うのかァァァァァァァァ!!??
救わないのかァァァァァァァァ!!??
ねええええええええええええええ!!!!!!!!!!
(観客の叫び)
観客A「知らねぇよぉおおおおおおおおお!!!!」
観客B「歌で攻めてくんな耳が死ぬ!!!!」
観客C「でも、なんか……クセになってきた……クソッ!!」
【エンディング効果】
全観客、真顔で帰路につくが口ずさんでしまう現象が発生
政府、「この曲は合法か?」と真剣に議論
一部学者「これはもはや情緒核兵器である」と評価
【マリの冷静すぎる感想】
「……この曲のCDを焼いて配ったら、外交問題になりますよ」
「でも500万枚、初回生産しておきました」
「ライブ売り上げをチャリティーに全額寄付しても着服されそうだからやめとこう」
マリはお金を燃やし始めた。もうノーキャッシュレスの時代よ。
セリーネが完璧な歌声で反撃するも、誰も耳に入らない
「完璧すぎて、心に刺さらない」という異常現象が発生
デス・エンンジェルの音痴にこそ、不完全な共鳴が起きることが証明されてしまう!
セリーネ「……どうして……あなたたちの音に、涙する人がいるの……?」
フェーフェー「フゥオ!(訳:知らんけど、わたし、歌うの好きだし)」
オンチリーナ「……下手でも、想いは……響くのよ……ぐぅ……Zzz」
【判決】
審問会「音痴は罪ではない。“愛され音痴”こそ、新たな音楽の形である!!」
会場「拍手ーーーー!!(※建物全壊)」
【世界ツアー終了 音痴革命、成立】
・デス・エンンジェル、地上初の「耳栓付きメジャーデビュー」
・音痴のままで紅白出演内定(※防音スタジオから中継)
・音楽教科書に「音痴=表現の自由」と明記される