第12話 灼熱砂漠と耳が幻蜃気楼
――灼熱の地で、音がと観客たちが逃げ出す――
音痴革命を牽引する伝説のデスユニット「デス・エンンジェル」
破壊系歌姫オーヤン・フェーフェーと、睡眠系天使アイドルオンチリーナ=スヤリス。
彼女たちはついに、命知らずな世界ツアー第3地点へ向かう。
舞台:砂蛇帝国《耳の蜃気楼ホール》
気温58℃。
風速20mの逆走砂嵐が吹き荒れ、
観客の水筒が入場前に沸騰。
音が揺らいで、本物の音と幻聴が混ざる魔境!
そこで待ち構えていたのは
「音とは、聴こえるものに非ず幻に溺れる快楽よ……」
幻聴の魔術師:ミスラータ・アクウィーン
◇新曲:「夏だ祭りだ花火だ神輿だ 暑苦しいね。」◆
炎天下の脳がバグるレベルの、陽気すぎるタイトルなのに中身は暑さで幻覚を見るような曲。
しかも幻聴を誘発するリズムで、誰も正しい音程がつかめない。
歌詞(※暑苦しさ120%・幻覚率90%)
フェーフェー:
♪ ミッッッッッッッッッショオオオンッ!夏の!破壊!始まるぞぉおッ!!!(訳:始まります)
(※神輿3基倒壊)
オンチリーナ:
♪ なつ〜〜〜〜〜〜ぅぅぅ〜〜……ねむぅぅ〜〜い……(目がすでに閉じてる)
ふたり:
♪ はなび!ドカン!きみのこころがァァァァァ!
もえ〜て、もえ〜て、燃え尽きるぅぅぅぅ〜〜(体力限界)
フェーフェー:
♪フゥォアアアアッ!!!!(訳:神輿かつげー!!)
(※その叫びで祭り会場がクレーターに)
オンチリーナ:
♪ ネムレナイ……ネムレナイ……まつりのさなかでぇぇぇ……Zzz……
(※2番突入前に寝落ち)
ふたり:
♪ 暑苦しさがっ わたしの脳をぉぉぉ
とろけさせるのォォォォォォ(幻覚発動)
(最後のサビ:観客に幻聴が大量発生)
♪ これが愛ィィィ!?いや熱中症ォォ!?
き〜みがみえる〜〜〜〜〜〜(※ミラージュのように)
……いやそれ観客じゃない……幽霊だぁあああッ!!!(※実際にステージに幽霊たちが乱入)
【観客レポート】
「歌と幻聴が混ざって、神輿が喋ってるように聞こえた」
「花火の音より歌がうるさかった」
「幻聴なのか本物なのかわからないまま終わってた……最高」
幻聴の魔術師ミスラータ、
曲終盤、ふらりと観客席へ降りる。
「……わたしの“音の幻”が……本物の音痴に敗れるとは…… これはもう、本能で幻を超えてきた暴力……!」(※以後、弟子入り志願)
【マリの記録】
「これ以上“幻と現実の区別がつかない音楽”を量産しないでください」
「スタッフ全員、神輿に話しかける症状が出てます」
「幽霊さんたちはノーギャラでいいのでしょうか?」
マリはお金の価値が分からなくなった。お金で買えないものとは何なのか考えるようになった。