第8話 ゾンビ学者の恋とは、静かに、確かに腐っていく
フェーフェーに恋心を抱いた2人の男たちは、次々と告白し、そして爆発四散していった(物理的にも)。だがその中に、ただ一人だけ何も言わなかった者がいた。
彼の名は:ネクロ・ダ・ヴィリス
魔界死都ネクローザ在住。
かつて「死体再利用賞」を三度受賞した伝説のゾンビ学者。
自身の半分以上は既に“保存のきかない部品”で構成されている。
普段は無言。
棺桶型の書斎で、何かをずっと研究していた。
研究テーマ:「歌姫オーヤン・フェーフェーの音響分析」
フェーフェーのデスボイスを聴いた瞬間、
彼は静かに骨の手を震わせた。
「……この超低周波……ゾンビを治癒の特性を持っている……? これは……音で治す“生ける医学”……!いや、“死からの医学”か……!」」
彼は誰にも告げず、フェーフェーの全ライブ映像を視聴し、
音の揺らぎ、振動の深さ、成分波形、破壊後の建物断面まで解析。
毎日、そっと「フェーフェー治癒記録」を付けていた。
【第26日目】
今日も録音再生装置が破壊された。だが、足のむくみが取れた気がする。
私は少し、生き返った。
ある日、フェーフェーの控室に、無言で棺桶が運び込まれる。
中から、ネクロが出てきた。
ボロボロの学帽、骨とミイラ布に包まれた手に、一通の論文を握って。
「……これは、私の研究成果だ。君の歌声は、“生命の振動”そのもの…… だからお願いがある。私の実験体になって、結婚してほしい。」
フェーフェー「フゥオアアア!?(訳:なんでそうなるの!?)」
「いやいやいやいや、何を言ってるんですか!? 結婚が実験の一部!? そもそも何を調べる気ですか!?」マリがわってはいる。
「……“死と共にある愛”の理論を、証明したいのだ。 愛とは、腐っても失われないもの…… だから一緒に死んでみよう」
「死ぬのは断固拒否!!!」
「フゥオアアアアアアアアアアアッ!!!!(訳:私、生きて歌いたいんです!!!!)」
その一声で、学者の棺桶と全研究機材が木っ端微塵。
ネクロ「……やはり、素晴らしい破壊音波……(砕ける骨音)」
その後、ネクロは…爆風で吹き飛んだネクロの頭部は、しばらく空中をさまよい、静かにフェーフェーにこう言った。
「……ならば、君の歌声を浴びるだけで、私は十分だ…… これが、愛の“不完全燃焼”というやつか……(パキィン)」
フェーフェー「フゥ……フゥオ……(訳:どこからツッコめばいいの……)」
「とりあえず、“実験婚”と“死ぬまで一緒”って言ってくる男は、全員リストから除外ね」
ゾンビ学者ネクロはフェーフェーを実験体としてしか見ていなかった。
「フゥオア(訳:つまり全員アウトでは!?)」
フェーフェーに求婚した3人の男性は、フェーフェーの声に恋していたのだ。
なんだそれ?!