第三話 レアメタルの軍団
ウィンザー城を目前にして、ついに現れたのは──
数々の勇者を葬ってきた、伝説のモンスター軍団。
その名も《レアメタルヒーローズ》。
金属の鎧が太陽の光を反射し、ギラギラとまばゆく輝く。
足元の草原が、その重厚な存在感に押し潰されるように沈んでいく。
名前 レアメタル ヒーローズ
体力 : 9999
攻撃 : 999
防御 : 999
素早さ:180
この世界でレアメタルより産まれし鉱物のモンスター、魔法攻撃無効。攻撃と防御が高く、多くの勇者を処刑し葬ってきた。
「勇者さん、ここまでの旅ご苦労様でした。でも、残念ながら楽しい旅も、ここまでですね」
中央に立つリーダー格、レアメタルマンが不敵に言った。
「我々《勇者私刑執行代理人》である、レアメタルヒーローズが参りましたので」
「ふん、どうやら歓迎されていないらしいな」
勇者アルベルトが剣を構える。
その隣で、レアメタルソードマンが一歩前に出る。
「我が剣で──斬れぬものなど、この世に存在しない」
直後、レアメタルシールドマンが唸るように低く言い放つ。
「我が盾で──防げぬ一撃など、この世に存在しない」
リスクは小さく首を傾げた。
「……じゃあさ、お互いに攻撃し合ったらどうなるの?」
その瞬間、レアメタルマンが鋭く叫んだ。
「やめろ!それを言うな!永遠に禁じられた質問なんだ!!」
しかし時すでに遅し
「受けてみろ!我が絶対斬撃ッ!」
「受けてみろ!我が完全防壁ッ!」
ギィイイインン!!!という甲高い金属音とともに、二人のレアメタル戦士が火花と共に吹き飛び
2体は互いに激突し、貫き合い、そして……
「ぐ……ぐわあああああああっ!!」
2体とも光の粒となって、同時に消滅していった。
「おいおい……マジでやっちまったよ……知能が少ないバカなのかな」
リスクが肩をすくめた。この世界に矛盾という言葉か生まれた歴史的瞬間だった。
「よくも仲間をやってくれたなぁああ!!」
激昂したレアメタルマンが、突進してくる。
だがその瞬間──
「《空気のような存在》」リスクの気配が、ふっと消える。
その背後に、静かに、まるで影のように現れたのはリスク。
(これが……アサシン村人のやり方だ)
チク――
チクチクッ――!
細長い毒針が、レアメタルマンの金属装甲の隙間へと静かに突き刺さる。
「うぐっ!? なんだこの……鈍る感覚は……!」
さらに一撃、そしてもう一撃。
「この恨みをいまあああああ……!」
レアメタルマンが叫んだその瞬間。
――バシュン!
金属の巨体が、崩れるように光の粒となり、草原に散った。
「リスクさん……お見事です!」
シスターマリアが微笑む。
そのとき、静かに浮遊していた黒魔術師マーリンが口を開いた。
紫色のマントが風に揺れる。
「ふふ……リスク、あなたの“空気のような存在”は……確かにただの商人スキルではないわね」
「でも、私にはちゃんと見えてるから、油断しないでね?」
マーリンの目が妖しく光る。
「私そういうの、嫌いじゃないけど時には“味方”も刺すのかしら?」
リスクは背中に冷たい汗を感じながら、そっと視線を逸らした。
「さぁ、ウィンザー城へ入城だ」
アルベルトの声が響く。
ザコ戦とはいえ、自分が勝利に貢献できたことにリスクは小さな達成感を抱きながら、ウィンザー城の大門へと向かって歩き出した。