第10話 保育園参観日でさっちゃん、保護者席で無言の圧、陰口に仁義なしッ!
明日は参観日ですので、保護者の皆様は朝10時までに園にお越しください」
保育園からきたプリントを読んださっちゃんが呟く。
「参観日……まあ、問題ないわね」
ベルモットは当然、その場で寝たままプリントを鼻に貼って爆睡中。
バクちゃん「寝てるし行くの、お前しかいないやつだろ」
【当日・魔界ひよこ保育園 地獄分園】
参観日ということで、ホールには多くの保護者が集まっていた。
そこに姿を現したのは
ピンクのワンピース、ランドセル、ツノ、そして鋭い目つき。
「ダイ・マオウの保護者代理、姐さんこと“さっちゃん”入ります!」
保護者
「な、なんか来た……」
「ってかあれママ?どう見ても小学生……」
「ツノが威圧的……いやあれ、威圧じゃない、威厳だ……!」
保護者席で静かに座るさっちゃん。
だがその姿から放たれる“無言の圧”は、教師陣も引くレベル。
最初のプログラムは「みんなでできるかけ算ゲーム」
先生「はい、では次〜! マオウくん、前に出て〜!」
マオウくん(浮遊しながら前へ)
先生「3×3は?」
マオウ「9と思わせて罠だな。答えはルート3乗だ。1.7320508075」
「正解は……9だね〜」
マオウ《あ、ごめん、脳波ちょっとズレた》
保護者席、ざわつく。
「えーあれで魔王の息子ぉ〜?」
「ちょっとズレてない?」
「態度悪くなーい?」
そのとき
“ギギギギ”
ツノがきしむ音。
保護者席で、静かに湯気を立てる少女(?)がいた。
さっちゃん(無言で立ち上がり、保護者たちを見回す)
「……陰口って……こどもに聞こえるのよ」
全員、凍りつく。
「魔王の息子にだって失敗はある。でもそれを笑うようなヤツは教育者でも保護者でも、道を外れてんのよ」
ざわざわ……いや、もうシン……と静まり返るホール。
保育士(震え声)「さ、さっちゃんさん……落ち着いて……?」
さっちゃん「落ち着いてるわよ。普段の1/10以下の仁義モードよ」
バクちゃん(天井から逆さに覗きながら)
「それでも普通のヤツには、地獄より怖ぇんだよなァ……」
その後、マオウくんは得意の浮遊&超能力で
・絵画競技→筆を念力で操り“炎の寝顔ママ”を描いて優勝
・工作→段ボールで空中要塞を作り園を封鎖しそうになり表彰(※表彰理由:発想が魔界的)
保護者「す、すごいわ……魔王の血筋、バケモノ……」
さっちゃん「ふふん♪ わかればよろしい」
その日の帰り道。
マオウくん《姐さん、ありがとう。あのとき……ちょっと泣きそうだった》
さっちゃん「泣きそう? 泣いたら抱っこしてあげたのに。……ま、あたしも……ちょっとだけ、グッと来てたわよ」
マオウくんがふわっと浮かびながらくすぐったそうに笑った。
そしてベルモットは帰宅後、布団の中で寝ながら一言。
「……参観……すやすや……さっちゃんママこわい……けどすき……」
バクちゃん「寝てても情報入ってくるの怖いわ……」
魔界の保育参観は、教育と仁義が交錯する、仁義なき戦場だった。