第8話 育児フェスティバルで地獄遊覧でも熱中症対策は万全よ
ここは魔界中央育成公園、年に一度の特大イベント
「魔界・育児フェスティバル」が開催されていた!
会場は地獄火の大鍋で作られたベビーフード屋台、
角つきベビーカー専用駐輪場、授乳ルームには魔女助産師が常駐。
まさに、魔界ママたちの社交の場!
だがその会場を、カートでゴロゴロと押して歩く奇妙なチームがいた。
「ちょっと、あの2人……全然起きてないわよ……?」
「いや、アレが“噂の寝てる育児王族”らしいぞ……!」
カートの上で爆睡中の2名:
・ベルモット・ネクロデス(魔王の妹・母親)
・ダイ・マオウくん(超能力ベビー)
カートを押して汗だくなのが:
・さっちゃん(乳母?否定してるが事実上の育児担当)
・バクちゃん(夢魔。ハンドタイプ扇風機・保冷タオル担当)
バクちゃんが首に巻いた冷却魔布をしぼりながらぼやく。
「……これ、ただの寝てる二人を運ぶ耐久イベントじゃない……?」
さっちゃんも額から汗を拭きながら同意した。
「“熱中症対策は万全”って言ったけどさ、あたしらのこと誰も守ってないのよね……」
【10:30〜11:30】
■親子で踊って、楽しく足育!
先生「それではみなさん、魔界ステップからいきましょう~! 右、左、ツノ回して~♪」
周りのママさんとキッズがキャッキャと踊る中
カートの中ではベルモットとマオウくんが同時に寝返り。
先生「す、すごい!連携が……!これが“親子シンクロ睡眠”!!」
さっちゃん(踊らずじっとカートを押す)
「……寝ながら注目浴びるって何よ」
【12:00〜13:00】
■夫婦で話そう 妊娠中のマイナートラブル座談会
司会「本日は“パートナーへの感謝”と“妊娠中の支え”について語っていただきます!」
参加者が感動的な話を語るなか
ベルモット「……プリン……抱き枕……して……」
マオウくん《オムツは、心のセキュリティ……》
さっちゃん(深いため息)
「……てか、このふたり夫婦扱いされてるんですけど!?」
後ろのママ悪魔たちがヒソヒソ。
「まぁ……寝てるけど、似てるし……」
「寝てるからこそ“深い絆”を感じるのかも……」
さっちゃん「わけがわからないわよ!!!!」
【13:30〜14:30】
■股関節を動かそう! 今日からできる腰痛予防エクササイズ
インストラクター「さあ、膝を開いて深呼吸!無理のない範囲でツノを回して~!」
バクちゃん、さっちゃん、めっちゃがんばる。
ベルモット、マオウくん、カートごと日陰で昼寝中。
ママ参加者「……あの人たち、逆に正解なのでは……?」
パパ参加者「疲れてる時は寝る。育児も人生も、それが基本か……!」
バクちゃん「……いや待て、だんだん寝てる方が褒められ始めてないか?」
さっちゃん「そのうち“寝育て”とか言い出すんじゃないでしょうね」
【14:45】
全日程終了。
表彰式にて
司会「特別賞! “眠ってるのに存在感がすごいで賞は……ベルモット・ネクロデス様に!」
会場:(拍手喝采)
ベルモット「……zzz……うん……やっぱり子育ては……寝ながら……(スースー)」
マオウくん《うちのママ、寝てるのに賞取った……世界一だ……》
バクちゃん「これはもう“寝て育てる”っていうジャンルが爆誕した瞬間だな……」
さっちゃん「それでも、あたしは絶対にママじゃないからな!!」
そしてその夜。
さっちゃんは肩に湿布を貼り、ぐったりしながらこう呟いた。
「歩き疲れすぎた……あたしらが寝た方がよっぽど賞にふさわしかったわよ……」
ベルモットはその横で、スヤスヤと満足げに笑っていた。