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【44万6千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『眠り姫ベルモットの寝ながら子育て?できるわけがない、さっちゃんとバクちゃんの育児奮闘記』
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第5話 子どもたちの夜泣き VS 悪夢の番人

ここは魔界。

静かなはずの夜に、今、子どもたちの泣き声が響き渡っていた。


「うぎゃあああああ!」

「ひいいい!」

「こわいいいぃぃ!」


夜泣き、夜泣き、夜泣き。

その理由はただひとつ。



魔界で、今、“悪夢病ナイトメア・シンドローム”が流行していた。


 「ったく、こっちは寝ようってのによお!!!」

と隣の寝室でうるさそうに寝返りを打つベルモットをよそに――


バクちゃんは真剣だった。


「ついに来たか……悪夢病。これは……夢の魔物である俺の出番だぜ」


さっちゃんはピンクのワンピのまま魔法陣を描きながら訊く。


「そもそも、悪夢病ってなによ?」


「魔界の空気が不安定になると、悪夢が集合意識として生まれてくる。

 その悪夢が子どもたちに感染して、脳内で“ナマ”の悪夢を見るようになる……

 しかもこれ、見てる本人が泣けば泣くほど、悪夢が強くなるんだ」


「うわ、めんどくさ!!」


バクちゃんはベビーサタンのマオウくんをチラリと見た。


「さすがに、あいつも夜中ずっと悪夢にビビってた。こりゃもう、夢の中で対処するしかねぇ」


夢の中へ夢の中へ行ってみたいと思いませんか~うふふふ


{夢の中}_____________________


《夢界:悪夢汚染ゾーン》


黒い霧、ねじ曲がったぬいぐるみ、涙で濡れたベッドの幻影。


そこに、夢の中をパトロールする影が一つ


「出てこい、悪夢ども……!」


バクちゃんが姿を現した瞬間、空気が震えた。


「ワレワレハ悪イ夢ヲ見サセマス……」


不気味なノイズとともに、黒くうごめく化け物たちが現れる。

片目のクマ、針の歯車、そして“怒るママの巨大影”。


「おっと、それはトラウマ系の夢だな……」


バクちゃんの目が鋭く光る。


「だがな、俺は夢を喰う魔物。悪夢は、不味いんだよ!!!」


 口を大きく裂くと、バクちゃんは一気に敵へ飛び込む!


「喰って!喰って!!喰いまくる!!!」


悪夢を丸ごと吸い込みながら、黒いモヤを一つ一つ浄化していく。


ピシュウウウウッ!!


「ぐわああ!記憶喪失系悪夢溶けたああ!」

「え、やばい!寝小便トラウマが焼かれる。キャーー!」


最後に現れたのは、巨大な影。


挿絵(By みてみん)


「ワレハ夢ノ王 スベテノ夜泣キノ元凶ナリ……」


「まとめて食ってやるよ……!」


バクちゃんの体が光り出す。


背後には

眠っているはずのベルモットの魔力の残滓が、ふわりと浮いていた。


「……すや……夢の守り人……お願い……バクちゃん……」


「任せとけ、眠り姫……!」


バクちゃんの額に浮かび上がる紋章

“眠り姫ベルモット公認・夢の番人”


「夢魔爆喰・スイートナイトメアシュレッダー!!」


光の渦が悪夢の王を飲み込み、空が晴れた。


現実へ現実へ戻りたくないけど現実へ~ウフフ

__________________________________


翌朝。


子どもたちは全員、ぐっすり笑顔で起床。

マオウくんもふらふらと起きてきて、脳内で呟いた。


テレバシー

《よく寝れたぜ……姐さん、あいつすげえわ……》


「でしょ?」

さっちゃんはコーヒーを啜りながらニヤリ。


一方バクちゃんは……


「……く、くるしい……夢、食べすぎた……胃がもたれる……」


そのままベッドでうめきながら転がっていた。


「まさか夢に満腹ってあるの……?」

そしてその夜


「うう……寝たいのに……満腹で寝れねえ……」


そう、バクちゃんはまさかの**“寝不足”ではなく“寝多可ねたか”状態**に突入してしまった。


 

夢魔にとっての過食――それは、一睡もできない地獄である。


「睡眠できん、悪夢より不味かった……」


一人、星を見上げて泣いた夢の番人。


そんなバクちゃんをよそに、ベルモットは今日も……


「……夢のゼリーのプール……バクちゃん……全部食べた……」

と、夢の中で呪詛を吐きながら爆睡していた。



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