【最終話 】 そして、天罰と成敗のその先へ
大エイドの空に、ようやく朝日が差し込む。
崩壊しかけたスカイ釣りタワーの最上階、
瓦礫の中でミッシェル、お雪、楓が並んで座っていた。
髪は乱れ、服も破れ、顔には傷。
だが3人のその瞳は、確かに光を宿していた。
「ようやく……終わった……?」
楓が、肩を落とす。
「ええ……でも、わたくし、まだまだ民草の皆さまを救いますわよ……」
ミッシェルは笑いながらも、傷を抱えて座っている。
「……私は、もう少しだけ眠りたい」
お雪は、珍しく冗談のようにぼそりと呟いた。
そんな3人の前に、
あの“銀の影”が現れる。
銀髪を風に揺らし、紫のレオタードにケープを羽織る――
怪盗・ムラサキ=ミミだった。
微笑みながら、彼女は言う。
「正義の天罰と成敗、終わったようね」
3人が目を向ける。
「……ありがとう、ミミさん」
楓が真っ先に言った。
ミッシェルも立ち上がり、手を差し伸べる。
「あなたの囮作戦、完璧でしたわ。これで……あなたも、また一つ、民を救えましたのね」
ムラサキはそれには応えず、静かに空を見上げた。
「……けれど、私はまだ“救わなきゃいけない子供たち”がいるの。貴族の欲で奪われた未来を、盗み返すまでは、私は“罪人のまま”でいい」
「じゃあ……また消えるのか」
お雪がぽつりと呟いた。
ムラサキはくるりと背を向け、
最後にだけ笑みを浮かべて言う。
「正義ってのは、やっぱりあなたたちの役目よ。
私は裏道を行くから。
……じゃあね、ゼロの正義のヒロインたち」
そして、彼女の姿は朝霧に紛れ、静かに消えていった。
風が吹く。
空は青く、世界は静かに確実に少しずつ、正されていく。
楓がぽつりと呟いた。
「……クセ強かったけど、いい女だったわね」
お雪は目を細め、
「……また会うこと、あるかも」とだけ言った。
ミッシェルは、手のひらを胸に当てて、そっと囁く。
「成敗も、天罰も、ただの力ではありませんわ。それは人を、守るために使うべきものですのね」
そして、物語はいったん幕を下ろす。
3人のヒロインが歩くその背中は、
今日もまた、次の“誰か”のために進んでいく。
「天罰!」――「成敗!」
その声が、再び世界を照らす時が来たなら
きっと彼女たちは、迷わず立ち上がる。
『竜騎士のミッシェル姫と雪国の剣士お雪の天罰 成敗!時々 くノ一楓』
《いったん完結》