第8話 竜の国ドラゴに潜む 闇の組織を解体せよ
ドラゴ国、そこは竜と人が共に生きる、誇り高き竜騎士の国。
その中枢部で、ミッシェルたちゼロ強襲部隊に密命が下された。
「国の兵器研究施設に、不正な資金と“生体兵器の噂”がある。
潜入し、真実を掴め」
「まさか……わたくしの国で?」
ミッシェルは信じられなかった。
幼い頃から育った誇りの国が、そんな闇を抱えていたとは――。
潜入捜査の最中、ミッシェルは見覚えのある影と再会する。
その男は、柔和な笑みをたたえたまま言った。
「大きくなったな、ミッシェル。……君は私の宝だったよ」
それは、父の弟・レオナール。
ミッシェルが幼い頃に母を亡くして以来、
父の代わりに最も愛を注いでくれた叔父だった。
だが
「あなたが……この研究施設の……責任者ですの!?」
「そうだよ。そして“竜を操る 呪術プロジェクト”を推進したのも、私だ」
崩れ落ちるように、ミッシェルは膝をついた。
「あなたが……あの子たちを……」
「竜は兵器だ、ミッシェル! 今さら何を夢見ているんだ?平和? 共存? 笑わせるな! 我々は竜を使って“勝ち続ける”べきなんだ!」
「“勝つ”ために……あの子たちを檻に閉じ込めたのですか……?」
ミッシェルの目から、静かに涙が流れる。
「あなたは……わたくしの“大切な人”だったのに……!」
そこへ現れる、お雪と楓。
「泣くのは後だ。……立て、ミッシェル」
「敵は身内でも、切るときゃ切る。それが任務でしょ?」
涙をぬぐい、ミッシェルが立ち上がる。
「……ええ。ならばわたくしは“ゼロ強襲部隊”として、闇を断ちますわ」
レオナールが研究所の奥から、“実験兵器化された竜”を放つ。
数体の竜が、呪縛術と鎧で強化され、暴走状態で襲いかかってくる。
「さあ、愛した竜と戦え!それが“現実”というものだよ、ミッシェル!!」
「……違いますわ」
ミッシェルが槍を構える。
「あなたが“現実”を語るのならわたくしは“希望”を、竜と共に突き通します!!」
ミッシェルが跳ぶ。
お雪が斬る。
楓が封じる。
連携は完璧だった。
ミッシェルは涙ながらに叫ぶ。
「竜は兵器ではないッ!! 竜は、家族であり、友であり愛する者ですわッ!!」
そして二人は同時に叫ぶ!
「天罰!」―― 「成敗!」
銀の一閃と、炎の突撃が重なった。
その斬撃と突撃は、竜の暴走エネルギーを一瞬で断ち切り、
レオナールの魔力を打ち砕いた。
爆発と共に、辺りに静寂が訪れる。
その声が、暴走した竜たちの心に届いたのか、
一体、また一体と鎧が砕け、光となって消えていった。
レオナールは拘束された。
「……私は、ただ君に“力”を与えたかった。優しすぎるお前を、“勝てる者”にしたかった……」
「あなたの愛が、どんなものであったとしても、わたくしは、信じたものを誇りに思いますわ」
ドラゴ国の裏で進められていた研究は解体され、
ミッシェルは竜たちの解放を見届けた。
「……正義ってのは、難しいものだな」
「でも、あんたらしい選び方だったよ」
「わたくしは、優しさを武器にしてまいりますの」
三人の背に、解放された若き竜たちが空を舞った。