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【44万6千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『竜騎士のミッシェル姫と雪国の剣士お雪の天罰 成敗!時々 くノ一楓(かえで)』
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第7話 黒竜グランデルの暴走!ミッシェルの過去

ゼロ部隊の元に届いた一報は、静かで重いものだった。


「南断崖帯にて、黒竜と思しき大型生物が暴走。山岳一帯を壊滅させ、付近の村が孤立。

交戦中の部隊、連絡途絶」


 ミッシェルは報告書を手にしたまま、動けなかった。


「……黒竜……まさか、グランデル?」



その名を口にした瞬間、心臓が痛んだ。

記憶がよみがえる。

あの漆黒の鱗、冷たい風のような瞳。

小さな竜の子と、孤独な姫だった自分。


「行きますわ。今すぐに」


「落ち着け。何が起きてるかまだ状況が」


「わたくしにはわかりますの!! あの子が、わたくしを呼んでますの!」



断崖地帯。

空は真っ黒な雲に覆われ、雷が轟いていた。


大地は引き裂かれ、兵士たちは逃げ惑う。

その中心で、漆黒の龍グランデルが咆哮を上げる。


挿絵(By みてみん)


それはかつての優しい姿ではなかった。

血走った目、剥き出しの牙、全身に走る赤黒い呪符痕。

狂気を帯びた魔力の波が、地表を焼き尽くす。


「グランデル……やっぱり、あなた……」


ミッシェルの瞳に涙が浮かぶ。


お雪が前に出る。「あれはもう“理性”を保っていない」


楓が天井からひょこっと現れる。「これ、たぶん呪詛だよ。誰かに感情を乗っ取られてる」


ミッシェルははっとする。


「……“感情増幅の呪術”……!?あの子の“寂しさ”を、無理やり“怒り”に変えて……」



■■■


数年前。


ミッシェルは政略のため、竜騎士の教育機関へ留学していた。

その間、黒竜グランデルとは会えず、文も交わせなかった。


「わたくし、すぐに戻りますわよ。待っていてね……!」


でも。あの時、グランデルは言っていたのだ。


「ボクは、人間が……怖い。でも、ミッシェルだけは信じてる」


それすら、呪術師に利用された。


◆◆◆



「あなたは……“わたくしに会いたかった”のですね……」


ミッシェルは槍を捨て、魔力を抑えて歩き出す。

怒りの黒い竜に、まっすぐ近づく


お雪が言う。「……やるしかない」


楓が応じる。「止めるだけ、止めよう」


グランデルの咆哮。

その翼が、空を裂く。

巨岩が砕け、ゼロ強襲部隊を襲う!


ミッシェルの前に、お雪が滑り込み、斬撃で空気を裂き流れを変える!


楓が天井からグランデルの額へ接近、封呪札を投げる!


「“龍封・静心の結界”――ミッシェル、今だ!!」


ミッシェルは叫ぶ。

 

「私はあなたを、責めたりしませんわ!!

どれほど寂しかったのか、痛かったのか、苦しかったのか全部、受け止めて差し上げますの!!」


その言葉が、黒龍の心に届いた。


グランデルの瞳から、ゆっくりと

涙が一筋、零れ落ちる。


赤黒い呪符痕が、パリン、と音を立てて砕け散る。


そして、竜はゆっくりと膝を折った。

静かに、ミッシェルの手に額をあずけて。


戦いの後。

グランデルは深い眠りについた。

呪術の後遺症で、回復には時間がかかるだろうと診断された。


「それにしても……あんたの“声”、すごかったよ」


「……言葉で心を救うなんて、珍しい」


「当たり前ですわ。“想い”は、暴力より強いのですもの」


三人の影が、夕日を背にして伸びていく。


ミッシェルはそっと呟く。


「グランデル……また、一緒に空を飛びましょうね。今度は、誰にも邪魔させませんわ」


 


 

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