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【45万PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『メイドが冥土の土産よ狙撃30(サーティー)/D.M.(ダリ・メンドウ)』
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第6話 鉄のレシピ帳を撃ち抜け

調理は即殺、五皿勝負。狙撃スパイスの宴が始まる。


「これ、マジで……やっかいね」


屋上に降る細雨の中、ダリ・メンドウはしけた煙草を投げ捨て、懐からスコープ付きショットガンを引き出した。彼女の前に広がるのは、“グルメアリーナ”世界の裏にある地下料理闘技場。


今回の任務は、「禁忌のガストメンタル」敵組織が開発した“味覚×感情支配兵器”の無効化と奪取。


その効果は「食べた者の戦意と怒りを無くす」。

つまり、兵士が闘えなくなる。


“うまさ”で、心を封じる。

料理が兵器になる世界が来たのだ。


会場には既に世界中から集められたシェフ兼傭兵たちが並ぶ。


辛味の魔女。

冷凍爆弾スープの男。

生臭フランス料理の亡霊。

そして「蒸し鯛パラダイス軍曹」……


だが、最後に現れたのは真紅のローブに身を包んだ審判。


「さあ、始めようか。テーマは……“心を奪う料理”。」


五皿勝負の幕が上がる。


ダリの前に運ばれたのは、見慣れぬ一皿――


《クラム・セレナーデ》

見た目はただの貝料理。だが、ひと口食べた者の“攻撃性”を封じるという。


審判の声が響く。


「ダリ・メンドウ、試食せよ」


「……めんどくせぇなぁ……」

ダリは口元をしかめる。

そして、そっと皿にスプーンを伸ばす。


その瞬間。

銃声。


バァン!!!


料理ごと貝を吹き飛ばした。


「試食拒否……!?なぜだ!」と審判たちが騒ぎ立てる中、ダリは静かに言った。


「これ、“食うと撃てなくなる料理”だろ?

 そんなもん、メイドとしてもスナイパーとしても失格なのよ」


審判のひとりが顔を歪める。


「バレたか……!」


敵は、五皿の中にガストメンタルを仕込んでいた。

ダリはポケットから取り出したメモを広げた。


「鉄のレシピ帳」。

かつてメイド長クラリスが残した伝説の料理メモ。


「……これで、“解毒料理”作れるかもね」


残りの食材は貝、ショウガ、チリパウダー、ライム、そして……


「さいごに火力ショットガン。」


キッチンに向かわず、その場で皿に食材を並べた。


そして


ドン!!!


挿絵(By みてみん)


ショットガンで一撃。香りが一気に広がる。


皿が爆ぜ、香ばしい香りが空気を切り裂いた。


「即席・貝スパイス煮込み。

 名付けて“クラリス流リセットスープ”よ……さぁ、あんたらも喰って解毒しな」


敵の兵士たちがそれを食べ、涙を流しながら戦意を取り戻していく。


「もう……撃ちたくなってきた!!」


「“味”で心を封じるだと? 料理をなめるなっての」

任務完了報告を出す前、ダリは缶コーラを片手に夜の街を見下ろす。


「ああ……マジでめんどくさかった……」


遠くでクロエの影がビルの上を歩く。


「……アンタ、また裏で動いてたんでしょ。勝手に恩返ししてんじゃないわよ」


ダリは、冷めた視線のまま、ふっと笑った。


風が皿の破片をさらっていく。


「でもまぁ料理も、任務も、撃ち抜けたからいいか」



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