第一話 新たなスキルと新たな武器
俺の名前はリスク。スライムに負けた、最弱の村人だ。
だが、そんな俺にもついに転機が訪れた。
前回のエアーウルフ戦で勝利したレベルアップ後に、手に入った、新スキルが。
「空気のような存在(※ボス戦では無効)」
え、なにこれ。
要するに、「気配が薄くなるだけ」の、商人向けスキルらしい。
どう考えても戦闘じゃ使えねぇ。
「くっそ……せっかくのスキルなのに、これじゃあネタ枠だよ……!」
ガックリと肩を落としながら、俺は港町リーベルに、ある汚い武器屋「アイアンハート」にふらっと立ち寄った。
今装備している木の剣では、さすがに、これからの旅は厳しいと思ったからだ。
そう言いながら、ふと目に止まったのは、埃だらけの細長い針のような武器。
誰も手に取らない、半額セールの紙が貼ってある細くて長い地味な針。
「……毒針?」
「お、見る目あるじゃねぇか」
「攻撃力20? 弱っ!」
「だがな、この毒針、クリティカルが出ると毒効果で敵が即死する。ボス戦は無効だがな。」
「マジで!? それって、運が高ければめっちゃ強くなるってことじゃ……!」
「……あんたの運、いくつだっけ?」
「今、運は225」
「……高えぇじゃねぇかよ。じゃあ4回に1回くらい、敵が毒針のクリティカルで死ぬな」
「それって……俺革命じゃん!!」
「買ったぁ!!」
俺は即決で毒針を購入した。
「おいおい、うるせぇよ。まぁ持ってけドロボウ!半額だ!」
【毒針】
攻撃力 20
クリティカルがでると毒により即死して敵が消滅する。(ボスは無効)
運が上がれば上がるほどクリティカル率は上昇する。
つまりだ、新スキル「空気のような存在(※ボス戦では無効)」で、モンスターの後ろに回り込む、そして新武器の毒針をチクチク刺すのだ、すると敵は残りの体力に関係がなく4分の1の確率で毒針のクリティカルにより消滅するのだ。凄くない?
いままで俺は村人で戦闘では空気のような存在でしたが、これからは、少しだけ役に立つようになった。
攻撃力0の俺でも、4回に1回は敵を倒せる!
地味に、地道に、しかし確実に……!
そして、俺はシスターマリアに頼み込んだ。
「シスターマリア、俺のステータス見せてくれ!」
「はい、聖なる光がリスク記す、ステータス!」
マリアの杖から放たれた柔らかな金色の光が、俺の体を包み込む。
次の瞬間、空中に光の文字が浮かび上がった。
―――――――
名前:リスク(村人)
レベル:23
体力:23
攻撃:0
防御:0
素早さ:0
魔力:0
賢さ:210
運:225
※この世界で、最も弱いスライムに負けた男。
―――――――――
「よし……!運だけは高い!」
調子に乗った俺は、宝くじ売り場へと足を運ぶ。
「宝くじ10枚ください!」
宝くじ賞品
1等(1口):リーベルの豪邸一軒家
2等(1口):漁船1隻
3等(2口):真珠のネックレス
もちろん狙うは1等、豪邸だ!
「結果は1年後にリーベル豊漁祭りにて発表でーす!」
「……長っ!」
~俺の妄想~
リーベルの豪邸一軒家の2階の寝室にて
「リスクさん、朝ですよ。朝食、できました」
シスターマリアが朝、巨大なベットにいる俺を起こしにくる。
「むにゃ……マリアぁ、もうちょいだけ……」
「もうっ、朝から甘えんぼさんですね」
俺たちは豪邸の寝室でまどろみながら、幸せな朝を迎えていた。
庭の噴水には水がきらめき、シスターマリアの笑顔がまぶしい。
俺は毒針を手に、今日も平和のために出撃するのだ。
「これが……俺の人生の逆転劇!」
~妄想終了~
勇者アルベルトと黒魔術師マーリンが町の長の家から戻ってきた。
このブリティッシュ王国の エリザベード女王に謁見して、船を借りないと港町リーベルから海への冒険が出られないらしい。
俺たちはブリティッシュ王国のエリザベード女王に会うために、王国の首都のウィンザー城のお城へと向かうのだった。