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【45万2千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『メイドが冥土の土産よ狙撃30(サーティー)/D.M.(ダリ・メンドウ)』
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第4話 メイド、最後の紅茶。引き金は、湯気の向こうで。

旧ローゼンタール邸

かつて仕えていた主、クラリス=ローゼンタールが拉致された。


ゼロ部隊オペレーター・ノエルの指示は短い。


《犯人は武装組織“グリーモア”。

指定された時間に“クラリスが最後の紅茶を淹れる”ことで彼女の処刑が始まる。その瞬間、君が撃ち抜け。ダリ・メンドウ》


「……マジでめんどくさ…… なんでまたメイド仕事から始めんのよ」


だが、クラリスは傭兵退団後にダリメンドウをメイドとして雇ってくれた。“唯一の恩人”だった。


作戦ポイントは旧屋敷向かいの教会屋根裏。

スコープの先に映るのは、古いサロンルーム。


中央には拘束されたクラリス。

彼女の隣に座るのは、敵組織の副頭領、ブライ=サヴォア。


そしてテーブルにはティーセット。


《条件通り、彼女が紅茶を淹れ始めた瞬間、撃ってこい。 “動きの合図”はティーポットの傾きだ。》


ダリは風の流れを読みながら、ライフルをセット。


指先でリップクリームを塗りながら、ため息ひとつ。


「クラリス様が湯気を立てると同時に……引き金、ね…… あー……気ぃ張るのダリィけど……でも撃つのは慣れてんのよ」


影が動きティーポットが、傾いた。


ゆっくりと紅茶が流れ出す。

湯気が立ち昇るその瞬間 窓のカテーンが揺れた。


「これが最後のメイド仕事……窓のそばに座った時点で、あんたの負けよ」


──パン。


銃声は一発だけ。

防音ガラスをすり抜ける特殊弾が、ブライの眉間を貫いた。


クラリスのティーカップがわずかに揺れる。


だが、茶葉の沈む音が再び静けさを呼び戻した。


夜。

クラリスはダリにだけ聞こえるように囁いた。


挿絵(By みてみん)


「あの頃のあなたの紅茶……いつも、心を温めてくれたのよ」


ダリは照れたように笑いながら、ライフルをケースに収める。


「もうあたし、ポットより銃が手に馴染むの。でも……今日だけは、あんたのためだった。たぶんね」


作戦後。


夜。屋根裏部屋に戻ったダリは、引き出しの奥に、

昔の紅茶缶をそっとしまい込む。


「もうあたしは、紅茶じゃなくて弾丸で語る女よ。 だけど……また誰かの心が冷えたら……淹れてやってもいいかなって…… いや……めんどくせぇな……やっぱ撃つわ」





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