おまけ08 ドス恋!母の一撃、バカジダ神殿突入!
──味がなくても平和ならそれでいいの?違う“美味しい”には、生きる価値があるのよ──
味なき国の最深部
灰色の街ヌートリアにて、ナターシャはついに“味覚封印”の黒幕
調味の神・バカジダが眠る神殿の扉をくぐった。
内部は静寂。空気さえ無味無臭。
目の前には、香りも音も奪われた空間に、ぽつりと浮かぶ鉄の仮面。
「……ようこそ、“無味の理想郷”へ」
低く、どこか悲しげな声が響いた。
仮面の奥から語られる、神の思想。
「私はかつて、“味”を分け与えた。甘い、辛い、酸っぱい、しょっぱい。だが人間はそれを争いに使った。『私の方が美味しい』『あいつの料理は下等だ』やがて味は、支配と差別の道具となった」
神は静かに手を広げる。
「だから私は“均した”のだ。すべての料理から味を奪い、全員を“平等な灰”で繋いだ。飢えず、争わず、静かに暮らす世界。……それこそが、平和だと信じている」
だがナターシャは、息を吸い込み――声を放った。
「違う。たとえ争いの種になることがあっても、味は希望よ!!子どもの成長を願って作るお弁当、疲れた夜にホッとするお味噌汁、失恋の涙を癒やすスイーツそれらをなくして“平和”って、言える!?」
「私は母親よ。あの子たちの“明日を生きる力”を、美味しい味の愛情弁当を作ってるのよ!!!」
バカジダは声を荒らげた。
「“愛の料理”こそが、人間を苦しめるッ!!作る者は評価されず、食べる者は選ぶ。だったらいっそ、最初から味など無い方が」
「そうやって自分を守るために、みんなの“笑顔”を消したのね?」
ナターシャは包みから“母の唐揚げ”を取り出した。
「だったら見せてあげる。“味”があるから人は立ち上がれるのよ。お母さんの味、なめるんじゃないわよ……!!」
「いっくよ~~~~!!!」
ナターシャの拳が光をまとい
\ドス恋ッ!!!!!!/
鉄仮面が割れ、口の中に唐揚げを放り込む。神殿が揺れた。
仮面の奥からあふれ出すのは、抑圧されていた無数の味と香りと、記憶と、想い。
バカジダは崩れ落ちた。
「この唐揚げは、うまい…………私は……ただ、静かな日常を……守りたかっただけなのに……」
ナターシャはその手を取って言った。
「静けさも、騒がしさも、どっちも人生よ。でも、“おいしい”って言える日常があるなら。それは、絶対に捨てちゃダメ」
バカジタは敗北を認め、味覚の味の解放を宣言した。
その瞬間、ヌートリアの空気が変わった。
・パン屋の窯から、香ばしい香り。
・市場に、野菜とスパイスの色が戻る。
・子どもたちが「美味しい!」と叫ぶ笑顔。
・老夫婦が、久しぶりのスープを啜って涙する。
女主人が、懐かしいレシピ帳を開きながら言った。
「……やっぱり、私は“この味”が大好きだわ」
神殿跡地で唐揚げを頬張りながら、ナターシャは言った。
「世界には、まだまだ“おいしくなる余地”がある。母として、料理人として、スパイとして行かなきゃね!」
背中のリュックには、調味料とレシピ帳。
そして、なによりも大事な母の誇り。
狼女でスパイでお母さんのナターシャの冒険は続く。
お母さん狼女 ナターシャの食いしん坊 ドス恋(この味にド・ストライク 恋しました!
【いったん完結】